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なでしこジャパン守屋都弥が振り返るパリ五輪「初めて『サッカー、おもろ!』って感じた」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・構成 text by Hayakusa Noriko

――大舞台でワンチャンつかんで、メラメラした想いを前面に出して立ち向かっているのかと思っていましたが、そんな葛藤も抱えていたんですね。

守屋 もちろん、楽しさもありました。ほぼ海外のクラブでプレーしている選手たちで、彼女たちと合わせることって、試合に出ないとできないんです。その合わせる感覚を(試合のなかで)だんだんつかみながらやるのが楽しくて。『(長谷川)唯だったらここにボールが出てくるよね』『(高橋)はなだったらこれくらいのところに(パスを)出せるよね』とか、みんなが自分を生かしてくれるのが楽しくて。そういう気持ちのほうが大きいからこそ、自分の持ち味が出せたんじゃないかな。

――その楽しさが最も色濃く出たシーン、というのはありますか。

守屋(グループリーグ第3戦の)ナイジェリア戦の2点目! はなから(田中)美南さんにタテパスが入って、美南さんがダイレクトで自分の前、(相手DFの)裏のスペースに出して、自分も(ゴール前にいる)『(植木)理子ならここに入ってきてくれるよね』っていうところにダイレクトでクロスを入れて......結局、理子のシュートは決まらなかったんですけど、(クロスバーに弾かれた)こぼれ球を美南さんが決める、っていう。あの流れは楽しかったぁ~。

――反対に、忘れられない悔しいシーンなどはありますか。

守屋 それもナイジェリア戦なんですけど、最初に(相手と対峙したときに)一発ではがされたんですよ。ワンタッチで入れ替わられて。あのときは、世界の速さに「やられた」って......。自分のなかで(周囲の対応を見ながら)相手との間合いを探っていて、自分が決めた間合いでやられてしまったので、あれは悔しかったですね。それでも、(相手の間合いは)「これじゃない」って、その後は修正できたので、よかったこととも言えるんですけど。

――個人的に世界との差を感じた部分はありますか。

守屋 決定力です。自分もアメリカ戦でシュートを打ちましたが、アメリカの選手ならあれも決めてくると思うんです。実際、アメリカは最後に日本の左サイドのあんな深いところから決めてきた。それも、疲れている延長戦で決めてくるんですから。しかも、ヤマさん(山下杏也加)がボールを触っているのに、それでも決められる軌道で。そこに、決定力の違いを感じました。

 自分たちは疲れていく一方なのに、相手はどんどん強くなる、というのは恐怖ですよ。でも(日本の)みんなもしっかり耐えていて、隙を見てシュートまで持っていかないといけない、ということは誰もが考えていた。そこを一歩リードしていたのがアメリカで。やっぱり、そこはすごいなって思いました。

――オリンピック期間中は、チーム全員で映像を見て、とことん考えて、話し合って......と、すごく濃い時間だったと思います。守屋選手はそのことを一番感じていたのではないかと思うのですが。

守屋 今までで一番集中力があって、目の前の相手とどう戦うか、考え抜いていました。相手の細かい動きまで見定めて、集中してやっていました。連戦で体はキツかったんですけど、頭は疲れてはいけないと。でも、それが全然苦じゃなかった。だって、それをやり続ければ上に行けるって、誰もが思っていましたから。これがやりがいっていうのか、(自分にとっては)初めてなくらい「サッカー、おもろ!」って感じました。

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