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ドイツW杯のブラジル戦に先発した巻誠一郎「もしかして」と思ったが、本気になった相手には「何もできなかった」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

 攻撃に出た際には一気に畳みかけてくるブラジルに、日本は為す術がなかった。試合は日本陣営のハーフコートマッチの様相を呈していた。それでも、日本はなんとか持ち堪えていたが、前半のアディショナルタイム、ロナウドに同点ゴールを決められて追いつかれた。

 やってはいけない時間帯での痛恨の失点。「1点リードのまま後半へ」という希望的なプランはあっさりと打ち砕かれて、日本の選手たちは落胆した。

「まだ同点で、終わったわけじゃない。ただ、テンポを上げて本気になったブラジルからどうやって点を取るのか......。僕には想像がつかなかった」

 後半、ブラジルは前半終了間際のゴールの勢いのまま、完全にゲームを支配した。日本は攻撃の糸口さえ見えない状態だった。

「自分はFWなので、ボールが来ないと話にならないんですけど、(後半に入ってからボールが)まったく来ないんです。それなら、守備で貢献しようと思ってボールを追うんですが、守備の(組織的な)トレーニングなんかしていないので、プレッシャーをかけていっても後方(のサポート)が続かず、まったくかからない。個人でプレスにいっても簡単にはがされてしまって、何も起きないんです。

 前線では何もできない。守備陣は耐えるだけ。苦しい時間が続いていました」

 ブラジルの怒涛の攻撃に対して、日本の守備陣はギリギリのところで踏ん張って、奪ったボールをクリアするのが精いっぱいだった。そのため、クリアしてもすぐに回収されて、攻撃を食らう。その繰り返しで、たまに前線にボールが入っても、巻や玉田はすぐに2、3人の敵に囲まれてボールを奪われた。

「その時、レアル・マドリードとの試合を思い出しました。あの時もまったく歯が立たず、ボールにすら触れなかった」

 巻が言うレアル・マドリード戦とは、2004年7月29日に国立競技場で行なわれたレアル・マドリードのジャパンツアーにおけるジェフユナイテッド市原との一戦。当時のレアル・マドリードは、デビット・ベッカム、ジネディーヌ・ジダン、ルイス・フィーゴ、ロナウド、ロベルト・カルロスらを擁し、「銀河系軍団」と称されたスター軍団だった。

 ジェフはその相手に1-3で敗れた。この時、巻自身も、チームも、スコア以上のレベルの差を痛感させられた。巻は、同試合と同じような絶望感をブラジル戦で感じていた。

 そうした状況にあって、日本は後半8分に逆転ゴールを許し、14分には追加点を奪われた。

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