サッカー日本代表「超攻撃的」ウイングバックの未来 ワールドカップ本大会ではどうなる? (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【W杯本大会ではどうなるのか?】

 サウジアラビア戦の日本の戦い方は、カタールW杯でのドイツ戦と似ていたかもしれない。押されながらも1対1では押し負けず、カウンターから得点して勝利した。

 スペイン戦とクロアチア戦は守備型の5バックだった。とくにスペインには圧倒的にボールを支配されたが、少ないチャンスを生かして勝っている。

 唯一、日本がボールを支配できたコスタリカ戦だけ負けている。守備型の戦い方には手応えをつかめたが、相手に引かれた時に攻め崩せないという課題が残ったわけだ。ウイングバックにウイングを起用する攻撃型3-4-2-1は、その課題への回答と言える。

 ただし、サウジアラビア戦を見てもわかるように、それがただちにW杯本大会のメインシステムとなるかと言えば、そうはならない可能性が高いだろう。試合展開が攻勢か劣勢か、要は相手との力関係によってウイングバックにどういったタイプを起用するか決めることになるのではないか。

 W杯で日本が力関係で圧倒的に優位になるような相手はほぼない。チーム数が増えるので、これまでよりも日本優位になるかもしれないが、ノックアウトステージまで勝ち上がれば、よくて互角、たいがいは劣勢を覚悟しなければならない相手になる。

 いかなる相手でもボールを支配して攻め込み、保持率でいえば65%以上をとれるならば、人材の多いサイドアタッカーをフル活用して攻め潰すという戦い方も可能かもしれない。

 だが、サウジアラビア戦でビルドアップに同数で圧力をかけられた時、それを回避できたのは守田英正の機転のおかげだった。ディフェンスラインに下りて数的優位を確保、鎌田大地と連動して攻め込みの形を変えた。守田がいなければ、ずるずると劣勢が続いていただろう。

 ビルドアップの修正を選手個人に頼っている状態では、いかなる相手にもボールを支配して押し込めるとは思えない。

 現実的には相手との力関係によってウイングバックの人選を調整し、試合展開に応じて選手交代を使って攻守の比重を変えていく。そのような戦い方になるだろう。その点で、超攻撃的と超守備的の中間をアタッカーのウイングバックで賄えたのは大きな収穫であり、W杯での戦い方を示唆するものだった。

著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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