サッカー日本代表のメンバー招集で見えた「余裕のなさ」 強化のあり方はこれでいいのか (3ページ目)
新たな選手を起用しながら目の前の相手に勝利する。畑を耕しながら予選を勝ち抜くことが、マックス値のアップには欠かせない強化方法になる。森保監督はまもなく38歳になる長友佑都を今回も選んでいるが、少なくともその枠はオリンピック組に回すべきなのだ。
日本代表に選出されることは、選手として箔がつくことを意味する。欧州のクラブが選手を獲得する際には、そのステイタスも重要視される。その分、移籍金は上がるが、日本サッカー協会のお墨付きがある選手のほうが、スカウトはクラブの関係者を説得しやすくなる。
欧州組を増やすためにも、欧州組をより上位のクラブでプレーさせるためにも、代表キャップは可能な限り多くの選手に与えるべきなのだ。そうなれば代表チームの層はおのずと厚くなる。競争は激しさを増す。それこそがいちばんの強化策なのである。
森保監督はW杯ベスト8以上を目標に掲げる。その可能性を、筆者は現状では20%だと見るが、アジア予選で縮こまった手堅い戦いをすればするほど、その可能性は減る。藤田譲瑠チマ、山本理仁(ともにシント・トロイデン)、斉藤光毅(QPR)、三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)、関根大輝(柏レイソル)あたりは、この際、多少無理してでも代表キャップを与えるべきではなかったか。強化のあり方、総合的なバランス論として、これでいいのか。山本ND、影山雅永技術委員長に尋ねたくなる。
現在の日本にはそれくらいの余裕は絶対にあるはずだと、筆者は思う。その余裕こそがW杯における好成績の源になるのだ。メンバーを固め、一戦必勝とばかり、石橋を叩くように手堅く戦えば戦うほど、尻すぼみになる。本番までまだ2年弱もあることを忘れてはならない。W杯とW杯の中間年に行なわれるオリンピックを終えたいま、4年間の使い方に誤りありと、あらためて言いたくなる。
プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
3 / 3