サッカー日本代表のメンバー招集で見えた「余裕のなさ」 強化のあり方はこれでいいのか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【テストするにはチャンスだったが...】

 だが「パリ経由北中米W杯行き」のフレーズを、いま積極的に使いたがる人はいない。昇格組はただひとり。A代表で使えそうな選手、言い換えれば森保監督のお眼鏡に叶った選手はひとりしかいないとなると、言いたくても言えないのだ。

 代表メンバー発表会見で、森保監督は、「新監督のサッカーが戦術的にしっかりしている」などと、中国の脅威を力説した。森保監督の傍らに座る山本昌邦ナショナルチームダイレクター(ND)は大仰にも「歴史的な戦いになるかもしれない」と、ことの重大さをアピールした。さらに記者からは、最終予選では前回、前々回とスタートで躓いていることを指摘する質問も飛んだ。

 3グループに分かれて争われるこの最終予選で、日本が所属するグループCは、他の2組よりは競った戦いが予想される。「死の組」と言い出す人さえいる。この予選でアジアの9番目になってもまだ大陸間プレーオフというチャンスが残されている大甘な設定にもかかわらず、である。

「楽な戦いだ」と言ってしまえば、観客動員や視聴率に影響が出るだろう。サッカー産業にも影響が出る。だからか、協会はメディアと一緒になって危機感を煽ろうとする。絶対に負けられない戦い。会見場が、オリンピック組を多数昇格させている余裕はないと言わんばかりの、大真面目なムードに包まれるのも、当然といえば当然かもしれない。

 だが、筆者にはそれが余裕のなさに見える。相手は中国とバーレーン。スタメンを欧州のトップリーグでプレーする選手だけで組めそうな日本が警戒しすぎるのは、本来、かっこ悪い相手である。むしろテストするにはチャンスなのだ。

 U-23日本代表とA代表の関係を健全かつ潤滑にするためには、多少無理をしても、ある程度の人数を入れ替えるべきなのである。招集した人数は27人。ベンチ入りのメンバーは23人。試合に出場する選手は最大16人だ。4人ぐらい入れ替えても戦力は低下しない。

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