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パリオリンピックのサッカーが行なわれたナントでの試合を見て思い出す 26年前のフランスワールドカップとチケット問題 (3ページ目)

  • 後藤健生●文 text by Goto Takeo

【記者にもチケット問題があった】

 手探り状態は記者たちも同じだったし、記者団もまたチケット問題で苦労させられた。今回は、あまり知られていない、もうひとつの「チケット問題」をご紹介しよう。

 記者は首からぶら下げる顔写真入りのADカードを取得する。これがないとスタジアムやメディアセンターには入れない。ただし、ADカードがあれば試合を観戦できるというわけではない。記者席に座るには記者用のチケットが必要なのだ。

 取材したい試合を選んでチケットを申請し、申請が通れば問題なく観戦できる。もし、申請が通らなかった場合は、メディアセンターでウェイティングリストに名前やAD番号などを登録しておく。

 申請が受理された記者は、試合開始90分前までにメディアセンターでチケットを受け取らなければならない。それまでに顔を出さなかった記者の分のチケットが、ウェイティングリストに登録した記者に分配される。

 1990年のイタリアW杯までは、全試合のチケットを開幕戦の時に一括で渡されたのだが、チケットを受け取ったのに会場に来ない記者がたくさんいた。それで、試合当日にチケットを受け取る方式に変わった。

 日本代表の試合なら日本人記者は優先だから問題はない。だが、他国同士の試合ではそうはいかない。しかも、通信社や全国紙などが優先されるので、フリーランスはチケットをもらえないことが多いのだ。

 ウェイティングリスト向けのチケット配分は、試合開始60分前に始まることになっていた。だが、フランスという国は何事も規則どおりには動かない。個々の会場のメディアセンターの責任者の個人的判断ですべてが決まるのだ。

 90分をすぎても、いつまでも申請の通った記者を待ち続けている会場もあるし、60分より前に突然ウェイティングリスト向けにチケットを配り始めところもある。

 その時にその場にいなかったらアウトだ! チケットをいつ配り始めるのかわからないとすれば、チケットデスクの前でずっと待機していなければならない。

 毎日毎日、そんなことが繰り返されたのでストレスは大きく、試合が始まるころには疲れきってしまう。僕は、これは一種の修行のようなものだと思って耐えた。

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