パリオリンピックのサッカーが行なわれたナントでの試合を見て思い出す 26年前のフランスワールドカップとチケット問題

  • 後藤健生●文 text by Goto Takeo

連載第9回 
サッカー観戦7000試合超! 後藤健生の「来た、観た、蹴った」

なんと現場観戦7000試合を超えるサッカージャーナリストの後藤健生氏が、豊富な取材経験からサッカーの歴史、文化、エピソードを綴ります。現在開催中のパリオリンピックの男女サッカーの試合が行なわれたナントは、1998年フランスW杯で大会初出場の日本がプレーした思い出の地でもありました。今回はそんな26年前の日本サッカーの状況と、当時大きなニュースとなったチケット問題について振り返ります。

ナントのボージョワールスタジアムで、U-23日本代表はパリオリンピックのイスラエル戦を戦った photo by JMPAナントのボージョワールスタジアムで、U-23日本代表はパリオリンピックのイスラエル戦を戦った photo by JMPAこの記事に関連する写真を見る

【ナントで開催されたパリオリンピックの日本の試合】

 パリ五輪で快進撃を続けたU-23日本代表が準々決勝で散った。

 なんたる不運! せっかく3連勝で首位通過したというのに、隣の組でスペインが2位になってしまうとは......。

 試合では「三笘の1ミリ」ならぬ「細谷の数ミリ」で細谷真大のスーパーゴールが取り消されてしまった。だが、爪先が数ミリ出ただけでオフサイドというのは、ルール本来の趣旨を逸脱したものとしか言いようがない。

 ツキが味方してやっと勝てるような相手なのに、日本に不運が続いたのでは完敗も致し方ない。

 しかし、スペイン相手に攻め込む時間帯を作り、47%のポゼッションを記録したのは大収穫。グループリーグでの完勝も合わせて、日本サッカーにとっては画期的な五輪だった。

 GKの小久保玲央ブライアン、センターバックの木村誠二と高井幸大、ボランチの藤田譲瑠チマ、センターフォワードの細谷と、中心軸に好選手が揃ったことがもたらしたものだろう。

 舞台となったフランス各地の競技場も懐かしかった。

 女子代表(なでしこジャパン)がスペイン、ナイジェリア、U-23代表がイスラエルと戦ったナントのボージョワールスタジアムは、1998年のフランスW杯で日本がクロアチアと対戦したスタジアムだ。ほかの会場は2016年のEURO(ヨーロッパ選手権)を前に全面改装されたり、新築されたりしたが、ボージョワールは26年前とほとんど変わっていなかった。

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プロフィール

  • 後藤健生

    後藤健生 (ごとう・たけお)

    1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2022年12月に生涯観戦試合数は7000試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。

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