パリオリンピック全勝でベスト8へ まさにスペイン的な大岩ジャパンが正面から「本家」に挑む (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【苦戦を承知でのメンバー入れ替え】

 一方、左サイドの佐藤と初出場となった内野のコンビは、右ほど悪くなかった。攻撃を仕掛ける回数はそれなりにあった。ただ、佐藤のドリブルは第1戦、第2戦で先発した斉藤光毅に比べると単調で、相手の逆をとることができないという弱点を抱える。内野もそれを補う動きはできなかった。第1戦、第2戦で先発した大畑歩夢のほうがハマり役のように見えた。

 日本の苦戦は両サイドからきちんと攻められなかったことに尽きる。そこで相手にダメージを与える攻撃ができなかったことが、GK小久保の活躍を生む原因になっていた。

 しかし、それは当初から予想することができた。大岩剛監督は苦戦を承知でスタメン6人を入れ替えたはずだ。なにより次戦スペイン戦のチームコンディションを優先した。この割りきりがまったくできなかった前回との違いである。

 決勝ゴールを決めたのは、後半34分に荒木と交代で投入された細谷真大。アシストは佐藤だった。だが、それ以上に称賛したくなるのは、そのひとつ前で佐藤に展開のパスを送った藤田譲瑠チマになる。川﨑が負傷したため、細谷と同じタイミングで投入された日本の主将は、登場するや格の違いを見せつけた。得点シーンがそうであったように、それ以来、日本の攻撃に立体感のようなものが生まれた。

 日本の勝利は、藤田、細谷という中心選手が途中交代でピッチに立ったことと深い関係がある。

 だが、できれば使いたくなかった選手だろう。この試合、後半のアディショナルタイムは8分あったので、彼らは中2日で約20分間プレーしたことになる。スペイン戦を考えれば、数分程度に留めたかった。

 彼らを使っていなかったら、イスラエル相手に引き分けどころか、敗れていた可能性もある。だが、敗れても、次戦の相手はスペインと決まっていた。考えようによってはムダ遣いにも見える。どちらがよかったか。

 スペインはユーロ2024のチャンピオンだ。以前からの魅力である中盤サッカーに、ニコ・ウィリアムズ、ラミン・ヤマルという強力ウイングが加わり、内もよければ外もよい、完璧なバランスで欧州一の座に就いた。良質なウインガーが急増中の日本サッカー界を触発するような優勝劇だった。

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