谷口彰悟「アジアカップを振り返らずに、前には進めない」ベトナム戦のピッチ上で覚えた違和感の正体 (3ページ目)

  • text by Harada Daisuke

【どこか横綱相撲をしてしまっている】

 それでも前半のうちに逆転し、最終的に4-2で勝利できたことはポジティブに捉えていた。2失点したこと、内容的に苦しかったことも含め、選手全員がアジアカップの難しさ、厳しさを実感し、さらに手綱を締めていかなければいけないと話していた。

 第2節のイラク戦は、会場も違う雰囲気になる。中東のチームが相手であり、アウェー感はさらに増すだろう、と。

 また、ベトナムとは異なり、ボールが行ったり来たりを強いられる展開になる可能性もあると警戒していた。そのため、ロングボールへの対応や前からのプレッシャーの掛け方、ポジショニングも修正して臨んだ。

 しかし、結論から言えば、1戦目の教訓を生かせずに2戦目も終わってしまった。

 第1節でも球際の緩さに表れていたように、チーム全体がどこかフワッとしているというか、どこか受けに回ってしまっている感覚が拭えなかった。横綱でもないのに、どこか横綱相撲をしてしまっている──。そう指摘されても、決しておかしくはなかっただろう。

 前半に2失点した日本は、1-2で第2節を落とした。得点源であるFWに2得点を許したのは、センターバックとして反省すべき点であり、責任を感じている。

 その結果、ハーフタイムで自分は交代することになったが、アジアカップではその後、プレーで挽回する機会は訪れなかった。第2節以降は、自分自身でもチーム内での序列が下がったことを受け入れなければならず、さらに悔しさが込み上げた。

 それでも最年長として、チームに対してやれること、できることはあると考えていた。

 2年前のカタールワールドカップでも、試合に出る可能性が低くとも、毎試合、準備を怠らなかったことでチャンスは巡ってきた。それを思い出せば、ここで緊張の糸を切らしてしまうと、次の機会を生かすことはできないと思えた。これは自分の心に課していたことだが、大会期間中は、何があってもやり続けようと覚悟を決めていた。

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