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日本代表、インドネシア戦勝利でも、いまだに見えない前線4人の「最適解」 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【中央の高い位置でボールが収まらない】

 だが森保ジャパンでは、まさにピッチの中心で自由奔放に、少年サッカーチームのエースのようにプレーする。だが採点すればせいぜい6。中心でプレーしながら中心選手に相応しい活躍ができずにいる。看板倒れに終わっている。

 三笘がピッチの中心でプレーすれば同様な問題が発生する。それは森保一監督にも見えているだろう。だが、久保はそうではないと見ているようだ。何でもできる選手として扱っている。

 左利きながら、左、右、真ん中とポジションを苦にせずプレーできる選手、適性エリアが広いオールラウンダーと言えば、アントワーヌ・グリーズマンを想起する。アトレティコ・マドリード及びフランス代表で、文字どおり中心選手としてプレーしているが、久保には少なくとも今のところ、グリーズマン的な要素は備わっていない。

 久保のポジション的な最適解である右ウイングには1番手として伊東、2番手として堂安が控えている。人材豊富で溢れた状態にある。それが、久保が1トップ下に回る理由なのかもしれない。だが、イラク戦に左ウイングで先発した南野がそうであるように、適性外の場所でプレーするデメリットは大きい。サッカーでは、ハマっていない選手を放置することこそが苦戦の源となる。久保の魅力が発揮されないばかりか、周囲にもいい影響を与えない。

 前の4人の組み合わせの悪さが改善されない限り、日本代表のサッカーにいい風は吹かないのである。

 そのうまくいかないサッカーの中心に久保はいる。三笘同様、サイドで使ったほうが中心選手らしさは発揮できることは明々白々であるにもかかわらず。久保を右ウイングで使えば、1トップ下の候補は南野、旗手ぐらいに限られる。苦戦の原因はつまり、森保監督が鎌田大地の代役を選ばなかったことに尽きる。その重要性を感じなかったのだろう。

 センタープレーヤー候補は数えるほど。さらに言えば、1トップもポストプレーを得意にしない選手ばかりを選んでいる。

 中央の高い位置にボールがコンスタントに収まらないと、その他の選手はボールを追いかけるばかりになる。安定したパスワークは望めない。左、右、真ん中のバランスも取れない。

 苦戦の原因は思いのほかハッキリしている。自らを省みず「アジアは甘くない」と言って納得しようとする限り、優勝は望めないだろう。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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