「鎌田大地はどのポジションもできるように映るが、そうではない」日本代表のミャンマー戦での中盤3人をスペインの名指導者が分析

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

「イージーな相手との戦いだったが、森保一監督は対応に余念はなかった」

 スペインの目利き、ミケル・エチャリはそう言って、日本がミャンマーを5-0で制したW杯アジア2次予選開幕戦を振り返っている。

「これだけ力の差があると、戦いのプランは意外と難しい。ミャンマーは5-4-1というよりは6-3-1と、人海戦術で守ることだけに徹していた。日本がいくらか攻め立て、実際にゴールを奪っても、その姿勢を変えなかった。勝つつもりは毛頭なく、大量失点を防ぐためだけの戦いをしたが、日本は粘り強く、高い強度で攻め続けた。私は監督を束ねる立場の人間として、森保監督が選んだ戦いに敬意を表したい。繰り返すが、簡単な相手との戦いこそ、簡単ではないからだ」

 スペインの監督養成学校の教授でもあったエチャリは、レアル・ソシエダの現指導者にも何人もの教え子たちがいる。フアン・マヌエル・リージョ(元ヴィッセル神戸監督)、ハゴバ・アラサテ(オサスナ監督)らは高弟と言えよう。先日は、スペインの指導者たちの団体から、長年の功績を称えられる賞を受けており、その発言には説得力がある。

 そのエチャリは、ミャンマー戦をどう分析したのか?

チーム全体を前に押し出す役割を果たしていた田中碧 photo by Ushijima Hisatoチーム全体を前に押し出す役割を果たしていた田中碧 photo by Ushijima Hisatoこの記事に関連する写真を見る「日本は、システムそのものはいつもと同じだったが、人を変えていた。明らかに力が落ちる相手に対し、中盤に田中碧、鎌田大地、南野拓実という3人のセットを起用。どの選手も攻撃面のバイタリティを感じさせ、自分たちでボールを握るだけでなく、積極的にパスを入れ、自らも前線に入り、ミドルも狙う。そうしたメッセージが打ち出されていたわけだが、実際に狙いどおりのゲームになった。

 前半だけの出場だった鎌田に関しては、繰り返し主張していることだが、中盤と前線をつなぐポジションで使うと力を発揮する。2点目となるミドルシュートは鮮やかで、彼の真価を発揮したと言えるだろう。ギャップに入ってパスを受け、シュートを打つまで無駄のない動きで、最後は利き足ではない左足にもかかわらず、あの精度だ。

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プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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