日本代表ベストメンバー招集がもたらす停滞感とリスク「選手ファースト」と言えるのか? (3ページ目)
【W杯予選アジア枠増、CL・EL出場者急増の現実】
2006年W杯予選のアジア枠は8.5だ。4.5だった従来からほぼ倍増したことになる。アジア予選で敗退する可能性は限りなくゼロに近い。CLとEL出場者の急増、すなわち過密日程で連戦する欧州組の増加とともに、日本サッカーが初めて経験することになるこの現実と、森保監督はどう向き合うか。続投を機に第1期と何を変えるか目を凝らしてきたが、残念ながら何も変わっていない。
口をついて出るのは目先の勝ちにこだわる姿勢ばかり。勝つためにはバリエーションのある戦い方が必要だと、5バックで戦うことを、この日の会見でも正当化した。5バックになりやすい3バックで戦う監督を、自分を守るための戦術、保身以外の何ものでもないと一刀両断したのはイビチャ・オシムだったが、森保監督はそれを、賢くしたたかな戦い方だと肯定する。サッカー監督には勝利と同時に追求すべきものがある。本質的で持続的な強化である。そのことを森保監督は理解しているだろうか。あるいは全く重要視していない可能性さえある。
ひたすら勝ちにこだわるだけでオッケーな競技もあるかもしれない。一戦必勝の甲子園を今から戦おうとしている監督なら、わかる気はする。それを強く否定する気にはならない。だが、2026年に本番を迎える日本代表サッカーは違う。毎度招集される欧州組の選手たちは、何よりその事実に気づいているはずだ。自身が所属するクラブの監督にあって、森保監督に足りないものがある、と。
欧州での過密日程で戦いながら、重要度が低い代表の試合にも」毎回招集される選手が気の毒に見える。一刻も早く「選手ファースト」に転じないと、2026年W杯に幸は訪れない。筆者はそう考える。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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