サッカー日本代表 トルコ戦でハッキリした選手のアドリブ任せ攻撃 プレー原則はなくて大丈夫? (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

【前半の日本はほとんどが中央攻撃】

 日本の攻撃には特徴的な事象が見て取れた。

 たとえば、前半15分の伊藤敦樹の先制ゴールもそのひとつ。自陣ペナルティーエリア付近でブロックを作るトルコに対し、選手が流動的に動いてボールをつないでから奪ったゴールシーンだ。

 この場面で、ボランチの田中碧からペナルティーエリア手前でパスを受けたのは、右のハーフレーンに攻め上がっていた右SB毎熊晟矢。その後、毎熊が右サイドの堂安にボールを預けると、堂安がキープする間にボランチの伊藤(敦)が大外に回ってパスをもらう。そこから伊藤はカットインを始め、堂安とのワンツーを挟んで、さらに中央に持ち込むと、左足で強烈なミドルショットを叩き込んでいる。

 トルコの1トップ以外の9人がペナルティーエリア付近に密集していたにもかかわらず、緩慢なマークでシュートブロックさえもできなかった無気力な守備は大いに問題だったが、狭いエリアで連動しながらボールをゴールに近い中央エリアまで持ち込み、得点に結びつけた日本の攻撃は評価に値する。

 また、この試合で躍動した1トップ下の久保も、20分に抜群のスルーパスで古橋にゴールチャンスをお膳立てし、28分にはペナルティーエリア手前から自ら放った無回転シュートで相手GKのミスを誘って中村のゴールを導き出した。シュートにはつながらなかったが、ゴール前で細かい動きをした堂安を見逃さず、鋭いパスを送ったシーンもあった。

 日本が前半に作ったこれらのチャンスは、そのほとんどが中央攻撃だった。例外は、毎熊が自ら奪取したボールを敵陣奥深くまで運んでからクロスを供給し、中村が決めた3点目のゴールシーンくらいで、基本的には久保と堂安にボールを集め、左ウイングの中村はフィニッシュの場面でゴール前に顔を出す、というパターンが目立っていた。

 結局、前半の日本のクロスは右SB毎熊が供給した2本のみ。左はSBの伊藤(洋)、左ウイングの中村もゼロだった。

 これは、おそらく日本が意図した現象ではなく、2列目に堂安と久保、そして左サイドから縦方向ではなく、中央方向に向かって攻めるのを得意とする中村を並べたことによる、自然発生的なものだと見るのが妥当だろう。しかも左SB伊藤(洋)も単独で縦に前進するタイプではない。攻撃が右に偏ってしまうのも当然だ。

 両サイドでしっかり幅をとって攻める。これは、これまで森保監督が何度も口にしてきた言葉だ。それを考えると、3点を奪った前半の日本の攻撃は、それほど理想的ではなかったととらえることもできる。実際、緩慢な守備を続けたトルコも日本の偏った攻撃パターンに対応するようになり、日本のチャンスシーンは時間とともに減少している。

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