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急転直下、女子W杯の放送が決まるまでの舞台裏 日本の女子サッカーを取り巻く状況は世界と逆行している (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【欧州でもかなりの値引き】

 たとえばヨーロッパの"ビッグ5"とよばれるフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリスにおいても、放映権の交渉は難航した。男子のW杯の放映権の相場は通常1カ国あたり1億ドル(約140 億円)から2億ドルだ。今回FIFAがいくらを期待したのかははっきりとはわからないが、その半分くらいと言われている。しかし、イタリアが「払う」と言ってきたのはほんの30万ユーロ(約4600万円)。ちなみに2022年男子W杯の放映権には1億6000万ユーロ(約240億円)を支払っている。またイギリスのBBCとITVの申し出は合計900万ユーロ(約1億4000万円。2022年男子W杯の約8%)だったと報じられている。

 当てが外れたFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は激怒した。この金額は「世界のすべての女性」に対する侮辱であり、FIFAにはより多くの金額を要求する「道徳的、法的義務」があると発言、金額を上げないならば放送させないと脅した。

 一方、ビッグ5側の言い分としては、2019年大会の視聴率がよかったのは、フランス開催で時差がなく、そしてそれなりの強豪がそろっていたからだという。だが今回は時差もあり、参加枠が増えたことでサッカー無名国も少なくない。誰が真夜中にフィリピンやハイチの試合を見るだろうか、というのだ。また女子CL人気は、女子サッカーの人気だけでなく、クラブチームの人気も加味されている、と。

 最終的に、女子サッカーの番組を定期的に放映するという条件も加えて、ヨーロッパでの決着はついた。FIFAは決して明かさないが、当初よりかなりの値引きをしたと思われる。

 放映権の値段は各国によって違う。南米やアフリカの国へ提示したものと、ヨーロッパに示したものは違うし、ビッグ5とその他ヨーロッパ各国に提示したものも違う。日本には、ビッグ5とまではいかないものの、それに近い額を期待したはずだ。ヨーロッパに比べれば開催地であるオーストラリア・ニュージーランドと日本は時差も少ない。数少ない優勝経験国でもある。当然と言えば当然だ。だが──。

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