三笘薫の高速ドリブルを可能にするトレーニング法をフィジカルトレーナーが予想 スピードが匹敵する「元日本代表」の名前も挙げた
フィジカルトレーナー・吉原剛氏から見た三笘薫のすごさ 後編
(前編:なぜ三笘薫のドリブルは止められないのか 0.5歩の差を生む「動的柔軟性」>>)
三笘薫(ブライトン)の最大の武器である高速ドリブル。それを可能にしているのは、足を地面に着いた時の「反発力」だというが、それを最大限に利用するためにどんなトレーニングを行なっているのか。また、相対するDF目線で、三笘を抑えるためのヒントはあるのか。フィジカルトレーナーの吉原剛氏が語った。
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【三笘がやっていそうなトレーニングは?】
――三笘選手は、どのようなトレーニングを取り入れていると思いますか?
吉原 あくまで私の予想ですが、あの大きな反発力は「プライオメトリクストレーニング」の積み重ねによって培われたところが大きいと思います。瞬発力が必要な陸上選手が行なうことが多いですが、地面に足を着ける時間を極力短くして、筋肉の収縮速度、瞬発力を高めるトレーニングです。
――具体的にはどんなやり方なんでしょうか。
吉原 一例としては、足を真っ直ぐ伸ばしたまま、膝のクッションを使わずに左右の足裏で地面をプッシュして前に進む方法。それを修得すると、強い反発力を得て高く弾むことができるようになります。反発力をうまく使えるようになると、無駄な動きがなくなってエネルギー消費が抑えられるので、三笘選手は試合後に残る身体のダメージも少ないのではないかと思います。
サッカー選手は全方向の動きが必要ですから、左右、後方、斜めなどさまざまな方向に跳ぶ練習もしているのではないかと。それによって、「この方向に跳ぶ時、左右の足裏で地面をプッシュするバランスはこのくらい」という感覚も掴めると思いますよ。
さらにこのトレーニングは、他の能力を高めることも期待できます。
――他の能力とは?
吉原 「空間認知能力」と「判断力」です。さまざまな方向に跳ぶプライオメトリクストレーニングは、自分の周りの空間を意識しながら、「身体と足の向きはどうなっているか」「次はどこに跳ぶか」「地面を足でどうプッシュするか」を瞬時に判断して跳ぶことを繰り返すことになります。
それは、サッカーにおいては次のようなことに活かすことができると考えます。
①自分と自分以外の選手がフィールドのどこにいるのか
②展開によって、選手とボールがどのように動いていくのか
チームに空間認知能力や判断力に優れた選手が多いと、ノンバーバルコミュニケーション(言語以外の情報を用いたコミュニケーション)ができるようになります。選手たちは言葉をかけ合わなくても「お互いがどの位置にいて、どの方向にどれだけのスピードで動くのか」を予測してプレーすることが可能になる。アイコンタクトすら必要なくなるでしょう。
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