なぜ三笘薫のドリブルは止められないのか 0.5歩の差を生む「動的柔軟性」をフィジカルトレーナーが指摘
フィジカルトレーナー・吉原剛氏から見た三笘薫のすごさ 前編
サッカー日本代表は、6月15日のエルサルバドル戦を6-0、20日のペルー戦を4-1と快勝。主力選手のひとり、三笘薫も2試合で1得点2アシスト、記録に残らないところでも多くのチャンスを演出した。
プレミアリーグのブライトンでプレーする三笘は、今季、公式戦41試合で10ゴール7アシストを記録。チームはリーグ6位となり、クラブ史上初となるUEFAヨーロッパリーグ出場権の獲得に貢献した。
三笘の最大の武器といえば、スピード感あふれる変幻自在のドリブルだろう。世界屈指のリーグのDFたちも翻弄したが、何がそれを可能にしているのか。アメリカでフィジカルトレーニングを習得し、独自のトレーニング理論でバスケットボールのプロチーム、プロのサッカー選手や野球選手、五輪選手たちを指導する吉原剛氏に、三笘の動きのすごさについて聞いた。
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【他のサッカー選手との動きの違い】
――フィジカルトレーナーの視点から、三笘選手のドリブルはどう映りますか?
吉原 前提として、私は選手としては三苫選手と同じレベルでサッカーに取り組んだことがないので、本人にしかわからない部分もあると思いますが、さまざまな競技のトップ選手を担当してきた経験から話をさせていただきます。相手DFを置き去りにする素晴らしいドリブルは、映像を見る限り、三笘選手は俊敏性やスピードが求められる陸上選手と同じようなトレーニングを導入しているのではないかと感じます。
陸上選手は静止した状態からの加速、そこからいかに早くスピードに乗るかが他の競技の選手よりも求められます。そういった動きは、左右の足裏で地面をプッシュし、そこで生じた強い反発力を使って身体の重心を前に押し出すことで可能になります。
前提として、上半身と下半身の軸を把握し、「身体がどの角度になるともっとも加速できるか」を理解しておかないといけないのですが、三笘選手はそれも含めて動きを体得しているように見えます。先天的な素質もあるでしょうが、練習を積み重ねてきた成果なのではないかと思います。具体的にどんなトレーニングなのかは、後ほど(後編で)説明しましょう。
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