なぜ三笘薫のドリブルは止められないのか 0.5歩の差を生む「動的柔軟性」をフィジカルトレーナーが指摘

  • Text by Sportiva
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

――他のサッカー選手と、どのように動きが違うのでしょうか?

吉原 時代と共に変わってきている印象もありますが、サッカー選手はボールを保持した時に、基本的には重心を低くした状態で方向転換したり、スピードに緩急をつけたりする印象があります。安定感を求めてのことなのかもしれませんが、加速時には地面を踏み込み、減速する際には膝で踏ん張って「よっこらしょ」という動作を入れることになる。そういった"準備"の動きが入った分だけ、俊敏性は落ちることになります。

 一方で、三笘選手は重心が高い。踏ん張って大きな力を生み出すのではなく、膝をあまり曲げずに足裏で地面をプッシュすることによって大きな反発を生み出し、緩急をつけたり方向を転換しています。イメージ的には、陸上の走り高跳びの選手に近いでしょうか。上方向に"跳ねる"力を活かしていますね。そのため動き出しの時点で、他のサッカー選手よりも常に0.5歩くらい前に出ているような印象です。

――トップレベルの世界ではより大きな差になりそうですね。

吉原 そうですね。しかも緩急の動きを自由自在にコントロールできるわけですから、DFが彼の動きに対応するのが困難なのもうなずけます。

――そういった動きが可能なのは、身体的に特に優れた部分があるのでしょうか。

吉原 まずは動的柔軟性(体を動かしている時に求められる身体の柔らかさ)でしょうか。筋肉はゴムと同じように"弾み"ます。動的柔軟性の差がどのように出るかは、一本の棒をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。ゴムでできた棒であれば、垂直に地面に落とした時に大きく弾みますが、木やプラスチックの素材だとそこまで弾みません。

 ただ、勘違いしてはいけないのは、前屈した時に頭が膝にくっつくといった柔軟性、動きが止まっている時の体の柔らかさ(静的柔軟性)とは違うということです。そういった柔軟性を求めすぎると、足で地面をプッシュした時の反発力も弱くなります。

 先ほどの棒の例でいうと、グニグニと柔らかすぎるゴムのようなもので、それを落としても反発力を吸収してしまって大きくは弾みませんよね。だから俊敏性が必要なスポーツの選手たちは、止まった状態でのストレッチをやらないことが増えています。

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