日本代表のエルサルバドル戦で最高評価を得たふたり スペインの名将は攻撃より守備を絶賛した
「とても高く評価をしたい選手がふたりいる。ただ、その前にゲームの仕組みを語るべきかもしれない」
スペインの目利き、ミケル・エチャリはそう言って、日本がエルサルバドルに6-0で大勝した一戦について振り返っている。エチャリはレアル・ソシエダで20年近くあらゆる役職に従事し、エイバルでは監督、アラベスではスポーツディレクターを務めた。バスク代表監督も10年以上務めた"バスクサッカーの巨人"である。
「たとえ実力差があって、開始すぐに数的優位に立ったとしても、90分を通して集中したゲームをするのは簡単ではない。日本のピンチは、前半途中の一連のセットプレーのみ。攻守が機能していた証で、及第点をつけられる内容だった」
チームを率いていれば、トレーニングマッチで格下に胸を貸し、開始早々に優位に立つこと自体は珍しくない。しかし、そこでどう攻め、守るか。選手がやるべきことを見極める作業はとても重要だという。
「勝ち負けや得点差は相手があることだが、いい内容の試合だった」
そう語るバスクの巨人が見たエルサルバドル戦とは?
攻守両面でエルサルバドル戦の大勝に貢献した守田英正この記事に関連する写真を見る「まず、日本は4-1-4-1で戦ったということだが、客観的には4-4-2と見るべきではないか。堂安律のポジションは、同じラインにいるはずの旗手怜央よりも上田綺世に近く、両サイドの選手よりもしばしば高かった。インサイドハーフやトップ下よりも、トップの一角に近い。堂安はパワーのある選手だし、ストレスなくコンビネーションを作っており、ひとつの発見だった。
開始4分で2-0とリードし、相手に退場者が出てしまったことで、ゲームとしての興味は失われることになった。
試合の入り方で、日本の選手たちのほうが成熟していた、ということだろう。開始1分の先制点、バックラインからのボールを受けた三笘薫が仕掛けてファウルを受け、FKで久保建英がすばらしいキックを見せ、谷口彰悟が豪快なヘディングで合わせる。気落ちしたところ、上田が相手ボールを奪ってPKを得て、それで追加点。強いチームの典型的な立ち上がりの怒涛の攻撃だ。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。