【谷口彰悟・新連載】カタールに行って5カ月「フロンターレ時代は、よくも悪くも空気を読み、周りに合わせてしまっていた」 (3ページ目)

  • text by Harada Daisuke
  • photo by ©本人提供

 また、当時の自分には、選手としてまだまだ未熟なところがあったと思っている。それは、自分に対する甘さと言い換えることもできただろう。

 筑波大学を卒業して、フロンターレでプロになった1年目の2014年からJ1で30試合に出場することができた。2年目の2015年にはリーグ戦34試合すべてにフルタイムで出場することができた。Jリーグではチャンピオンシップ準決勝で敗れ、天皇杯では決勝で敗れた2016年も、そしてJ1で初優勝することができた2017年も、僕は主力としてピッチに立つことができた。

 その一方で、甘さと表現したように、自分にはどこかで周囲に合わせてしまう傾向があった。周りに流されてしまうと表現したほうがわかりやすいだろうか。

 たとえば、自分自身としては練習でのプレーが納得できていないのに、周りと同じくらいできていたのであれば、それでいいのではないかと考えてしまうところがあった。同様に、自分自身は試合でのパフォーマンスに満足していないのに、周りが悪くなかったと評価してくれるのであれば、満足してもいいのではないかと思ってしまうところもあった。

 本音では、もっと強度が高く、激しい練習をしたいと思っているけど、チーム全体がそうした雰囲気ではないのであれば、自分を抑えて、周りに合わせてしまうとか......。よくも悪くも空気を読み、周りに合わせてしまうところが、練習にも出ていたし、おそらく試合にも出ていたように思う。

 そうした自分を変えたい、変わらなければいけないと、自分自身でも思っていながら、なかなか変えられないまま、また1年、また1年と過ごしていた。

 そして──そんな自分が変わるきっかけが、成長につながり、日本代表、カタールW杯への出場、そして31歳にして海外でプレーすることを決めた意欲へとつながっていった。

◆第2回につづく>>


【profile】
谷口彰悟(たにぐち・しょうご)
1991年7月15日生まれ、熊本県熊本市出身。大津高→筑波大を経て2014年に川崎フロンターレに正式入団。高い守備能力でスタメンを奪取し、4度のリーグ優勝に貢献する。Jリーグベストイレブンにも4度選出。2015年6月のイラク戦で日本代表デビュー。カタールW杯スペイン戦では日本代表選手・最年長31歳139日でW杯初出場を果たす。2022年末、カタールのアル・ラーヤンに完全移籍。ポジション=DF。身長183cm、体重75kg。

プロフィール

  • 原田大輔

    原田大輔 (はらだ・だいすけ)

    スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。

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