複雑化するサイドバック戦術をかつての第一人者・加地亮はどう見ているか「メリットもあるがリスクもある」「日本代表ではまだ時間がかかる」

  • 篠幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

ビルドアップ時に中へ入ってボランチになったり、ゴール前まで行って得点にも関わるなど、サイドバックのプレーは近年どんどん進化し、その戦術はついに日本代表でも導入され始めた。こうした流れを元日本代表の第一人者だった加地亮氏はどう見ているのか。複雑化するプレーの注目ポイントを教えてもらった。

◆ ◆ ◆

3月の日本代表戦、右サイドバックでプレーした菅原由勢3月の日本代表戦、右サイドバックでプレーした菅原由勢この記事に関連する写真を見る

【チームに戦術的な幅を持たせるのが今のサイドバック】

 私が現役の頃のサイドバック(SB)と言えば、タッチライン際で攻守に上下動を繰り返すプレーがほとんどでした。横への移動は、ボールが逆サイドにある時にポジションをある程度中に絞って、守備にも行けるし、攻撃にも行ける準備をする程度でした。

 それが近年のSBの役割はより複雑になり、より多くのプレーが求められるようになっています。たとえばビルドアップで中にポジションを取ったり、アタッキングサードでは味方のウイングを内側のレーンから追い越して、敵陣深くへ入っていったりということが珍しくありません。

 サイドに張っているだけでなく、より中に入ってマークを引きつけたり、ボールを散らしたり、縦パスを入れたりというプレーを求められ、私の頃とは見える景色はまったく異なります。

 タッチライン際であれば、相手からのプレッシャーは片方のサイドのみでした。それがいわゆるハーフスペース、ハーフレーンと呼ばれる中央とタッチライン際の間のスペースにポジションを取ったり、場合によっては中央にまで入っていくこともある。そうなると、相手のプレッシャーは360度の方向から来るので、もはやSBではなく、中盤や前線の選手と同じような能力、役割が求められることになります。

 私の頃よりも攻撃面でより多くの役割、能力が求められ、チームに戦術的な幅や選択肢を持たせるのが、今のSBというポジションになっています。Jリーグでも川崎フロンターレの山根視来選手や横浜F・マリノスの小池龍太選手、永戸勝也選手などが、そうした現代的なSBの代表的な選手として挙げられます。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る