松木玖生らを擁するU-20日本代表 コロナ禍の影響をもろに受け強化に苦しんだ世代が世界大会への切符を手中に

  • 松尾祐希●取材・文 text by Matsuo Yuki
  • 佐藤博之●撮影 photo by Sato Hiroyuki

【海外遠征ができなかった】

 今年の5月20日にインドネシアでU-20ワールドカップが開幕する。2年に1度行なわれる大会だが、新型コロナウイルスの影響で2021年度の大会は中止となっていたので、開催は実に4年ぶりとなる。

U-20アジアカップで準決勝に進出。5月のワールドカップ行きを決めた日本代表U-20アジアカップで準決勝に進出。5月のワールドカップ行きを決めた日本代表この記事に関連する写真を見る 今回11回目の出場を目指すU-20日本代表は、3月1日からウズベキスタンで行なわれているAFC U-20アジアカップに参戦。準決勝進出がワールドカップ行きの条件となるなか、日本はグループステージを3連勝で首位通過を果たした。

 そして、迎えた大一番の準々決勝。ヨルダンに対し、日本は序盤から落ち着いた試合運びで相手を圧倒した。カウンターから幾つかピンチを招く場面もあったが、後半9分にFW坂本一彩(ファジアーノ岡山)のゴールで先制し、後半25分にはFW熊田直紀(FC東京)が加点。守備陣も最後まで集中力を切らさず、2-0で勝利し3大会連続となる本大会出場権を手にした。

「本当によかったよ」

 試合後、選手たちに労いの言葉を掛けた冨樫剛一監督は、取材陣の前で安堵の表情を浮かべ、ホッと胸を撫で下ろした。

 思い返せば、このチームは多くの不安を抱え、アジアの戦いで苦戦を強いられる可能性も否定できなかった。

 コロナ禍の影響で、2020年は海外遠征が行なえなかったのが大きい。2021年に開催される予定だったU-17ワールドカップも中止。ほとんど試合経験を積めず、初めて海を渡ったのも昨年の6月だった。

「プライベートも含めて初めての海外」という選手も多数いるような状況のなか、フランスで開催されたモーリスレベロトーナメントでは戸惑いを隠せない選手が続出した。アルジェリアとの初戦が終わったあと、CB田中隼人(柏レイソル)は「海外の選手と試合をするのは3年ぶり。相手選手との間合いがいつもと違っていた」と、異国の選手と対峙する難しさを味わった。

 チームとしても自己解決能力が決して高いとは言えず、試合の状況が変わる毎に振る舞い方を模索。課題を抱えた状態で9月に行なわれたAFC U-20アジアカップの予選に挑んだ。

 ほとんどの選手が訪れた経験がないラオスでは、想定と異なる事象がいくつも起きた。食事面の対応はもちろん、環境もピッチコンディションもまるで違う。ラオスとの初戦ではキックオフ直前までスコールに見舞われ、ピッチ内でのアップ許可が二転三転し、日本では味わえないアクシデントに遭遇した。

 さらに試合が始まってもぬかるんだ芝に手を焼き、ボールをつなぐことすらままならない。最終ラインでパスミスが起き、あわや失点という場面もあった。それでも、4-0で勝ちきって弾みをつけると、一気に4連勝を飾って次のステージに進む権利を得た。

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