森保にあって、デシャンにはなかったのもの。ゆえにトルシエは、フランス代表への危惧を強めていた (3ページ目)

  • 田村修一●取材・文 text by Tamura Shuichi
  • photo by JMPA

 さてフランスだが、日本のように3つのステイタスのグループに分けられるわけではない。交代要員のステイタスが先発要員のステイタスと交じり合い、しかもその人数が14~15人に限られている。2番目のグループは存在しない。

「だが(本来は)2番目のグループこそが、チームの戦略だ」とトルシエは言う。

「彼らは勝つために試合を終わらせる選手であり、『(アントワーヌ・)グリーズマンがダメだから、キミが入れ』と言われる選手たちだ。日本代表の森保一や、モロッコ代表のワリド・レグラギにはそのグループがあったが、フランスは1番目のグループの選手が交代要員も兼ねている。

 しかも、3番目のグループには10~12人の選手がいる。日本は3~4人だけだ。それが、フランスの戦略だ」

 大会直前に、カリム・ベンゼマが負傷でチームから脱落した際、デシャンはベンゼマをチームのリストから外さずに代わりの選手を補充しなかった。すでに多すぎる第3のグループに入る選手がひとり増えても、実質的な戦力補充にはならないと判断したのだろう。

 実際に戦うのは、あくまでも第1のステイタスのグループというのがデシャンの戦略であった。

「第1グループ」の決まったメンバーだけで戦い続けたフランス「第1グループ」の決まったメンバーだけで戦い続けたフランスこの記事に関連する写真を見る「繰り返すが、デシャンは人間的であってメカニカル(機能的)ではない。

 イングランドには、試合を始めるグループと終えるグループがしっかりと存在する。日本もそうだ。森保はスペイン戦を、久保と前田、鎌田(大地)で試合を始めて、堂安と浅野、三笘で試合を終えた。次のクロアチア戦では、堂安と前田、鎌田で始めて、三笘と浅野、南野で終えた。それがコーチングだ。

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