風間八宏がカタールW杯で改めて感じたサッカー日本代表の課題。「攻撃で相手を上回れないと、決勝トーナメントは難しい」 (4ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Sano Miki

【目指すサッカーの定義と基準を決めたい】

 では、W杯の成績のみならず、日本が本当に強くなるためには何をすべきなのか。今後の方向性を探るためにも、世界のトップレベルに追いつくために日本サッカーが取り組むべきことについて、風間氏の考えを語ってもらった。

「これは日本代表だけの話ではありませんが、まずはどんなサッカーをするにも、定義づけをする必要があると思います。定義とは、フィールドのどれくらいの広さ(幅)を使って、どの場所で、どれだけの時間と回数を求めるサッカーをするのかということです。

 その定義を決めたうえで、次に数値的な基準を決める。その広さのなかで選手が何回ボールに触り、何本パスをつなぎ、そのパスの速さは何秒にするのか、あるいは何秒で相手のペナルティーエリアに入っていくのか。たとえば、600本のパスをつないで相手のペナルティーエリアに何回入っていくのかなど、その基準を数値として明確化することです。おそらくそれがイメージできなかったら、なかなか上を目指すのは難しいでしょう。

 今回の日本は、自陣ゴール前で15メートルほどの広さに縮められて守った時に強さを発揮しましたが、その幅を広げられた時はクロアチア戦のように失点を喫しました。そもそも自陣ゴール前に縮まった状態でサッカーをするほうが勝利に近づくのかも含め、もう一度しっかり検証しておくことが、今後に向けては大切になると思います。

 今回の日本は、犠牲心やチームワークといった側面が注目を浴び、それが我々にも響きました。ただ、サッカーの内容についての議論が出てこなかったという不思議な大会でもありました。もちろん日本の団結力や絆の強さは賞賛すべきだと思いますが、それとサッカーの技術・戦術論は違うので、そこをしっかり議論する必要があると思います」

 風間氏が言う、目指すサッカーの定義と基準。今後の日本代表を見ていくうえでも、大事なチェックポイントになりそうだ。

風間八宏 
かざま・やひろ/1961年10月16日生まれ。静岡県出身。清水市立商業(当時)、筑波大学と進み、ドイツで5シーズンプレーしたのち、帰国後はマツダSC(サンフレッチェ広島の前身)に入り、Jリーグでは1994年サントリーシリーズの優勝に中心選手として貢献した。引退後は桐蔭横浜大学、筑波大学、川崎フロンターレ、名古屋グランパスの監督を歴任。各チームで技術力にあふれたサッカーを展開する。現在はセレッソ大阪アカデミーの技術委員長を務めつつ、全国でサッカー選手指導、サッカーコーチの指導に携わっている。

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