「ベスト8入りするには、冨安健洋、遠藤航、三笘薫があと2人ずつ必要」。名波浩が振り返るカタールW杯 (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・構成 text by Shino Yukihiko
  • photo by JMPA

 決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦では、(クロアチアの)中盤の3人にクオリティの差で押し込まれたところはあった。でも、日本はいい形で先制。以降、2点目を狙いにいくのかどうかというなかで、グループリーグでの守備に自信を持っていたから「このままでいこう」という形に。その守備の勢いはすごく感じた。

 結果的にはすぐに追いつかれてしまったけど、イバン・ペリシッチのヘディングシュートは、もう一度やれと言ってもできないくらい、すごいゴールだった。だから、日本が守りに徹したことは、決して悪かったとは思わない。ただ、あれを決めることができるのが、ワールドクラスの決定力であり、W杯という舞台。

 厳しいことを言うと、スペイン戦、クロアチア戦の失点シーンは、どちらもクロスからのヘディングシュート。両方とも、クロスに対してのアプローチがやや甘かった。今大会躍進したモロッコはそこを絶対にサボらないし、厳しくいけていた。

 ベスト8に入ってくる国は、クロスだけではなくて、最後の場面で必ず体を投げ出してくる。そこに、一切の躊躇がない。その、あと一歩の強度の差はあったと思う。

 改めてベスト8への道は険しい、と感じた大会でもあった。コンディションをピンポイントで合わせなければ、目標には到底手が届かない。特に今大会は、メンバー26人のうち15人くらいは合わせられないと戦えない日程だったと思う。

 そのなかで日本がベスト8に入るためには、冨安健洋、遠藤航、三笘があと2人ずつは必要だ。本人を入れて、それで9人。そこに、権田や大迫勇也より1ランク上のGKとFWがほしい。

 あのタレントぞろいのイングランドでも、ベスト8がやっとだった。そう考えると、組織だけじゃなくて、個でも(戦力が)そろわなければ勝てない。田中が「化け物にならなきゃダメだ」と言っていたけど、まさに代表メンバーの多くが化け物クラスにならなければ戦えないのが、ベスト16以降のステージだと思う。

 日本が負けたあと、選手や解説者のなかにもW杯に出ていない人たちは「最低でもベスト8かと思っていた」と言っていたり、そういった記事を目にしたりしたけど、そんな簡単なものじゃない。ベルギーやウルグアイでさえ、グループで敗退していることを考えてほしい。

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