前田大然、浅野拓磨、伊東純也......。100mを走ったら誰が一番速いのか。元陸上オリンピアンがサッカー日本代表の走り方を解説 (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by JMPA

最短距離を動く脚の動かし方

 日本は、サッカーにおけるスピードの観点をアップデートしなければいけないと思っています。前述したように、近年のサッカーはたとえばカウンターの場面では加速力がなければ点になりません。そして、攻撃でそれだけ急加速が求められるということは、守備側にも対応できるように同じことが求められるわけです。

 それだけに日本はもっと"最高速度にどれだけ短い距離で到達できるか"にフォーカスして、世界基準のスピードに追いついていくべきだと思っています。

 では、世界基準のトップ選手たちはどのように走っているのか。その走りのフォームには共通点があります。とくに大事なのが脚を前に持っていく動作です。動き出しのところで、カカトがお尻に近づいていくのではなくて、ヒザの裏あたりを通って前に出ていくと、脚の動きとして最短距離を動くことになります。

 また、よく地面についている支持脚で、地面を蹴るようにイメージして走る人がいますが、これは、毎回片足でスクワットをしているようなものなんです。

 スクワットをするたびにヒザが伸展して余分な動作、負荷がかかっていることになります。90分の間にスクワットを何度も繰り返していれば、前半走れても後半にバテてしまうのは当然です。余分に負荷がかかるということはケガのリスクも高くなります。

 ですから走るというのは、地面を蹴るのではなくて、作った力を地面にちゃんと伝えられるかが大事になります。そうなると「足の回転を早くすればいい」と考える人がいますが、ピッチやストライドは、その人の身長や筋力のバランスによって成り立つので、一概にこれが正解と言えるものではありません。

 欧州のトップ選手たちがあれだけの強度で90分間走り続けられるのは、単にスタミナがあるからというだけではありません。もちろん、その部分でも秀でていると思いますが、なにより余計な負荷をかけずに高い出力で走っているからです。

 ブラジルのチアゴ・シウバが38歳であれだけのハイパフォーマンスを維持しているのは、さまざまな要素があるなかで走りの質が高いことも間違いなく含まれていると思います。

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