4年後が期待された西野ジャパン「26歳以下」8人の明暗。なぜ彼らはカタールに届かなかったのか (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

もしあの時ケガしなければ...

 ケガに苦しんだのは、大島も同じだろう。川崎フロンターレの10番は、黄金期を築くチームのなかでもその技術の高さは群を抜いている。もっともその能力とは裏腹に、ケガとは切っても切れないキャリアを過ごしている。

 コンディションさえ整えば、日本の大黒柱になれる存在だろう。今季のJリーグでもピッチに立てばハイパフォーマンスを見せているが、稼働率は上がらなかった。結局、森保監督就任後の日本代表での出場は中村と同様に、2019年のE-1選手権の2試合のみ。川崎勢の多い今の日本代表にこの男が加わっていれば、果たしてどんなチームになっていただろうか。

 ドイツで長くキャリアを築いた宇佐美は2019年にガンバ大阪に復帰するも、ここ数年は結果を出せないチームにおいて自身の調子も上がらず。今季はアキレス腱断裂の大ケガにも見舞われた。

 宇佐美と同様、長くヨーロッパに身を置いてきた武藤は2021年からヴィッセル神戸でプレー。Jリーグでは質の高さを示し、今年7月にはE-1選手権のメンバーに選ばれながら、負傷で辞退し、アピールの機会を失った。

 森保体制下で、宇佐美は1試合、武藤は4試合の出場に終わっている。久保建英(レアル・ソシエダ)をはじめとする東京五輪世代の活きのいいタレントの台頭もあり、実績十分の実力者も2度目のワールドカップには届かなかった。

 4年の月日のなかで、次々にタレントが台頭し、新陳代謝が促され、序列は変化する。それほど、サッカー界の進化のスピードは速い。

 そう考えると、長年日本代表であり続ける川島、長友、吉田、酒井のベテラン勢はもっとリスペクトされるべきだろう。経験が求められるポジションとはいえ、想像を絶する努力を続け、自らを律し、トップレベルをキープし続けてきたのだから。

 日本代表は安住の地ではない。4年後の日本代表も顔ぶれは大きく変わるだろう。そのメンバーに想いを馳せながら、まずはカタールで戦う26人に最高のパフォーマンスを期待したい。

【筆者プロフィール】原山裕平(はらやま・ゆうへい)
スポーツライター。1976年生まれ、静岡県出身。2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。

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【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに加入。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグMVPを受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

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