元日本代表・名良橋晃が選んだ歴代日本人右サイドバックトップ10。「神出鬼没」「涼しい顔で上下動」「世界に見せたかった」選手たち (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

ライバルだと思ってきたサイドバック

5位 酒井宏樹(浦和レッズ)

 酒井選手は説明の必要がないくらいですよね。パワフルで対人に強くて、スピードもあって。柏レイソル時代の若い頃から注目していました。当時はレアンドロ・ドミンゲスからボールを受けて、アーリークロスを入れるというプレーが印象に残っています。

 そこからブンデスリーガではハノーファー、リーグ・アンではマルセイユと渡り、チャンピオンズリーグも経験して、日本を代表するSBに成長しました。

 若い頃は勢いでやっている部分もあったでしょうが、経験を積んで周りを生かすことができるようになって、自分も前へ出て得点に絡める。守備ではネイマールをはじめ、身体能力や個人技の突出したアタッカーとの対戦で揉まれ、対人守備で掴んだものはたくさんあると思います。

 もともとの攻撃力に加え、抜群の守備の安定を身に着けて攻守に隙のない選手になりましたよね。30歳を超えても攻守に強度は落ちていませんが、ケガがちなのが少し気になるところです。

 カタールW杯のメンバーに選ばれると思いますので、どんな活躍をしてくれるのか楽しみです。

4位 市川大祐(元清水エスパルスほか)

 イチのことは、僕はずっとライバルだと思ってきました。17歳で日本代表に抜擢されて、「岡ちゃんの恋人」なんて言われて、「なんかすごい選手が出てきたな」と感じましたね。

 代表に呼ばれたあとの鹿島対清水で、いつもは右サイドのイチが左サイドに回されていて僕と対面したんですよ。その時はものすごくモチベーションが上がりましたね。すごい選手なのはわかるけど、高校生に負けるわけにはいかないと雑草魂でプレーしていました。

 イチはまるでカモシカのような選手というか。線は細かったけれど、スピードは本当に一級品。テクニックもあって、キック精度も抜群でした。1998年フランスW杯のメンバーからは漏れてしまいましたけど、これからの日本を背負って立つSBの第一人者として活躍していくんだろうなと思っていました。

 17歳で日本代表に選ばれた時は、正直羨ましかった。ただ、相当なプレッシャーもあって苦労もしたでしょう。でもそれを跳ねのけて、2002年日韓W杯のチュニジア戦では中田英寿選手のゴールをアシストしました。

 いろんなクラブを渡り歩きましたが、やはり清水での活躍がもっとも印象的ですね。当時の日本平はイチとかアレックス(三都主アレサンドロ)とか、サイドの選手が上がると盛り上がっていました。そのくらい愛された選手でしたね。

3位 加地亮(元ガンバ大阪ほか)

 加地選手はスピードがあって、上がっていくタイミングが絶妙なんですよ。そのオーバーラップから放たれる右足クロスの精度が、また本当に抜群でした。

 足元の技術も高く、今はSBに中盤での組み立てなども求められる時代ですが、彼はそういうプレーも難なくこなせた。引き出しの多い選手でした。

 2006年ドイツW杯を経験し、ジーコジャパンでは代えの利かない選手でした。ただ、前年のコンフェデレーションズカップのブラジル戦で惜しい決定機があったんですよ。あれを決めていれば世界に羽ばたいて行ったんじゃないかと思っていて、それくらい能力もポテンシャルも高い選手でした。

 セレッソ大阪や大分トリニータ、FC東京、G大阪、MLSのチーヴァスUSA、最後はファジアーノ岡山と本当にいろんなクラブで活躍しましたが、徳永選手や駒野選手もそうですけど、SBの仕事を淡々とこなせて、監督からの信頼は厚く、非常に計算が立つ選手だったと思います。

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