GKシュミット・ダニエルは「絶体絶命のピンチを止めたい」と語っていた。有言実行のPKストップで、カタールW杯へ存在感上昇 (3ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

「もっと存在感を出したかった」

 この落ち着いた振る舞い(あるいは性格)は、ピッチ上でも周囲に安心感を与えていることだろう。それは自然なところと、自覚的なところと、どちらもあるようだ。

「(試合中に)昂りすぎないように意識はしていて。今日は相手の前線のランニングが多かったので、こちらの最終ラインが対応できるように声を出していました。そこで一発で裏を取られるシーンはなかったと思うので、ディフェンダーの対応がよかったのはもちろんあるけど、自分も手助けできたかなと」

 自らのパフォーマンスについては「80点」と評価し、足りなかった点としては、「もっとハイボールで力強さというか、空中戦は大丈夫だなと安心感を与えられるようなプレーができたらよかった」と言う。「パンチングするにしても、もっとどかーんと飛ばすような。ゴール前にはオレがいるみたいな、それぐらいの存在感を出したかったです」とあくまで地に足をつけて。

 こうなると、先週のアメリカ戦で権田修一が負傷したこともあり、外野は最後尾の序列に変化が起こるのではないかと考えたくなるものだ。だが口許に優しげな微笑をたたえたアメリカ生まれのゴーリーは、そんな見方も穏やかに否定する。

「(序列を崩すようになったとは)思わないですね。二次予選、最終予選と何度も苦しい試合があったなかで、ゴンちゃん(権田)がチームをすごく救っていたので。今日はやっぱり親善試合だし、そこの差はあると思います」

 大らかな雰囲気と物言いでチームメイトを落ち着かせ、有事には機敏に巨躯を動かしてゴールを守る。世界の桧舞台では、間違いなく、「絶体絶命のピンチ」が何度も訪れるに違いない。その予行演習で有言実行を果たしたシュミットの存在を、仲間も指揮官も頼もしく感じていることだろう。

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