トルシエ監督の「奇策」の真相。山本昌邦が日韓W杯トルコ戦で三都主と西澤明訓を抜擢した理由を明かす (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 では、もうひとりの三都主はどうか。西澤とは違い、日本代表ではそもそもFWに入ることがなかった選手を2トップの一角で配したのである。

 だが、そこには事前の分析に基づくトルコ対策があったと、山本は明かす。

「トルコの右サイドバックが攻め上がった時の裏が空くので、そこを起点に崩すという戦略だったんです」

 トルコの右サイドバック、ファティー・アキエルは非常に攻撃的な選手で、この大会でもDFながらチャンスメーカーとしての働きを見せていた。

 しかしその反面、守備での反応が鈍く、日本が守備から攻撃への切り替えを速くすれば、背後のスペースを突くことができる。そんなスカウティング情報があったのだ。

「アレックス(三都主)を前に置き、相手のサイドバックが攻めに出た背後に流れて、そこから崩す、というのが我々の戦略でした」

 ところが、である。

「トルコが超守備的で、サイドバックが全然攻撃参加してこなかったんです」

 山本が苦笑いを浮かべて続ける。

「日本が狙っていた穴は、完全に埋められていて、アレックスが生きるスペースがありませんでした。

 日本はまだ(前回大会まで)ワールドカップで勝ったことのない国だったから、相手のことを分析して格上相手に何とか戦おうと必死にやっている。でも、相手のトルコもそんなに勝ったことのない国だから、やっぱり開催国の日本をかなり警戒して、対策してきました。

 経験のなさと言ってしまえば、それまでですが、相手のことばかり考えて自分たちがどうするかを決めても、ワールドカップの、それも決勝トーナメントになると、相手はそれをやらせてはくれない。相手も僕らのことを研究して、違うやり方をしてくるわけですからね。

 日本相手に『そんなに守りを固めてくるのか』とは思いましたが、僕らもやられたくないように、彼らもやられたくない。そのなかでとるか、とられるか。結果は0-1でしたが、1点の重みを思い知らされた試合でした。

 相手は守りを固めてくるかもしれないし、立ち上がりから前半勝負で一気に仕掛けてくるかもしれない。そういうことを想定して構えるというか、準備しないとダメなんだなと、あとになって気づかされましたね」

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