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元日本代表監督ファルカン独占インタビュー。在任時「一番の決断は前園真聖の起用だった」 (5ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

フィジカルの課題をこうして克服した

 そこで私はただ試合を見るだけではなく、すべてのJリーグのチームを訪ねることにした。フィジカルトレーナーやドクターと話をしては、代表に呼びたいと思っている選手が現在どんなフィジカルの状態であるのかを把握した。選手一人ひとりのカルテを作り、筋肉ひとつひとつの状態をそこに記した。各クラブの練習を見に行ってみてわかったことは、それぞれが全く異なる方法でトレーニングをしているということだった。フィジカルに対する見方もチームによりまるで違っていた。

 私たちはただ物理的に筋肉を鍛えるだけではなく、食事による強化もしたかった。それぞれがどのような栄養を摂取すればいいかを研究した。今でこそ当たり前の話かもしれないが、28年前としては画期的な方法だった。

 これらをもとに、私たちは選手それぞれに一番適した総合的強化メニューを練り上げた。こうしたことは一朝一夕にできるものではない。代表合宿の間だけやっていても意味はない。そこで我々は各所属チームに、このメニューに沿ってふだんから鍛えてもらえるようにお願いをした。

 我々がチームに命じたわけではなかったが、クラブもJFAも、選手自身も率先して私に協力してくれた。仕事をするうえでこれほど協力的な環境は初めてといってもよかった。経済的な障害もなければ、方法論に対する反発もなく、敵もいなかった。落ち着いて自分の仕事ができ、私は日本という国がより好きになった。
(つづく)

パウロ・ロベルト・ファルカン
1953年10月16日生まれ。現役時代はインテルナシオナル、ローマ、サンパウロでプレー。ブラジル代表ではジーコ、ソクラテス、トニーニョ・セレーゾと「黄金のカルテット」を形成した。現役引退後の1990年、ブラジル代表監督に就任。1994年、ハンス・オフトの後任として日本代表監督に就任した。

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