宇津木瑠美「なんでそんなつまらなそうにサッカーしてるの?」。11年ぶりの日本復帰で若い世代に伝えたいこと
宇津木瑠美が語る
「空白の1年と復帰」(後編)
サッカーから離れて1年。苦悩の真っただ中に訪れた、2011年のW杯優勝メンバーたちとの時間が宇津木瑠美の背中を押した。聖火ランナーとして10年ぶりに顔を合わせる人もいた。10年の時が経ち、ドイツW杯優勝をようやく功績として自分自身で受け止めることができた。
古巣の日テレ・東京ヴェルディベレーザで日本復帰を果たした宇津木瑠美この記事に関連する写真を見る「本当に久しぶりに、それこそ(2015年の)カナダワールドカップぶりにイワシ(岩清水梓)やアヤ(宮間あや)に会って、いろんなことを話しました。今もまだ、なでしこジャパンの優勝のことを話題にしてくれる人たちがいて、聖火ランナーという機会をもらえた。そういうのを見て、感じて、『過ぎたことを終わりにしてしまうだけじゃない在り方もあるのかな』って思ったんです。あの優勝が歴史のひとつなら、私たち本人が蓋をして終わらせてしまってもいいのだろうかってみんなで話をしたんです。伝えていくことは私たちにしかできないことだよねって」
2011年の自分たちを超えようと、あの優勝を自ら引き合いに出すことはしなかった。世間が騒げば騒ぐほど選手たちはどんどん冷静になっていく姿は、宇津木が言うところの"蓋をする"状態で、浮き足立たないよう自制していたのだろう。
「正直なところ、今さら過去の栄光にすがっても、とも思っているんです。私はあの決勝でPKも蹴ってないし(笑)。でも、そう言われてナンボかなとも思ったんです。過去の栄光で飯食ってるって言われても、そう言われる人がいてもいいか。そんなことを気にして大事なものが引き継がれないんだったら私がそれをやる!って舵を切った感じです」
これが選手としてピッチに戻る決断に直結する訳ではなかったが、もう一度サッカー界に戻る可能性が生まれたことは確かだった。引退か、継続か----。1年何のトレーニングも施していないフィジカルは一般人同等になっていた。簡単な決断ではない。悩みつくした結果、進退の最終的な決め手はやはり彼女自身の中にあった。
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