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宇津木瑠美「なんでそんなつまらなそうにサッカーしてるの?」。11年ぶりの日本復帰で若い世代に伝えたいこと (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・撮影 text&photo by Hayakusa Noriko

今、自分がやるべきこと

 奇しくも、日本では初のプロサッカーリーグであるWEリーグが開幕した。"プロ"として厳しい目を持つ宇津木にはどう映っているのだろうか。

「最初に移籍したとき、ヨーロッパってうまさが際立つ選手が多かったんです。そこで日本とも差を感じたんですけど、アメリカに渡ったとき、完敗だ!って思ったのが、選手のメンタルでした。立ち振る舞い、人間力がすごい。アメリカは残念ながら差別もあるし、そうならざるを得ないのかもしれないから、日本の背景とはずいぶん違う。同じレベルに日本が上がるのは簡単ではないと思うけど、人間として彼女たちはすばらしいものを持っているから強い。日本はまだまだだけど、ここからですよね」

 報われるとは限らない努力を、そのがむしゃらな姿を隠すことなく後輩たちに見せる宇津木。今、彼女が若い世代に残したいものとは何なのだろう。

「すごい抽象的なんですけど、なんでそんなつまらなそうにサッカーしてるの?とか、点獲られているのに死に物狂いでボールを取りに行かないの?とか思うことがあって......。誰でもわかるようなことを、サッカー選手がしてしまっていることが問題。高い技術を淡々と見せられても、ねぇ? 『もっと戦ってみようよ』というのを見せていけたらって思います。イワシもそれをプレーでやっていると思うし。まあそこに世代間ギャップがあるのは仕方のないこと」

 若い世代が少しずつ責任やプロフェッショナルを認識しはじめてきていることは確かだ。ベレーザに宇津木が入ることで必ず何か変化は起きるはず。そして、もちろん宇津木自身が11年ぶりに日本で見せるプレーもファン・サポーターにとってはまもなく再開する後期シーズンの注目ポイントとなる。

「どこまでコンディションを戻せるかわかりませんが、時を変えられる選手でありたいです。90分間プレーする選手はもちろんすばらしい。そうあるべきだと思う。でも、残り5分で誰が変えられる?って、なったらそれは自分でありたいと思っています」

 なんだか懐かしい。北京オリンピックの後も、ドイツW杯のあとも、彼女は同じ言葉を口にしていた。どん底を見ても、彼女の核は変わっていない。

「見ている人の印象に残るって重要なんです。でもこれはいろんな経験をして、一周回ってからの結論(笑)。回ってないヤツがこれ言ってたら、私ボロクソ言ってると思います(笑)。今は試合に出られるように日々全力を出す! これは有言実行ということで、自分にハッパをかけています(笑)」

 スポーツエンターテイメントに熱量は必須条件だ。プレーしている側に熱がなければつまらない。内に秘めているだけでは成り立たないのだ。"魅せ方"を今一度考えなければ日本の女子サッカーが飛躍することは難しい。WEリーグ元年に覚悟を持って熱を伝えようとする選手が日本で復帰をした。不思議な巡り合わせに必然を感じずにはいられない。宇津木瑠美----彼女の完全復活を待とうではないか。

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