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前田遼一が即決で選んだ自らの代表ベストゲーム。「体力も全部使い果たした感があった」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by AP/AFLO

 当時の前田は、2009年、2010年に2年連続J1得点王を獲得していることからもわかるように、Jリーグ屈指のストライカーとして名をはせていた。

 だが、実績に比して、不思議と日本代表には縁がなかった。2007年に日本代表デビューは済ませていたが、ザッケローニ監督の就任前に限れば、国際Aマッチ出場はわずか5試合に過ぎない。

 当然、ワールドカップをはじめとするビッグトーナメント出場の経験はなし。このアジアカップは、前田が29歳にしてようやく迎えた、事実上の"日本代表デビュー戦"と言ってもよかったかもしれない。

「自分がこの先、代表でプレーしていけるのかどうかが問われている、すごく大事な大会だったと思います。ザックさんに呼んでもらった時から、年齢的にはすごく上なのも感じていて、常にもうあとがないっていう気持ちでやっていました」

 だが、そんな気合いが空回りしたのか、グループリーグ初戦のヨルダン戦では、先発でピッチに立ちながら、前半だけの出場で李忠成との交代を命じられた。

 チームは1-1で引き分けたものの、前田個人には、ほろ苦いどころか、最悪に近いスタートとなっていた。

「この大会で結果を出せなかったら、もう終わりっていう思いでやっていたのに、前半だけで交代させられるくらいなので、いいパフォーマンスを出せず、チームもギリギリの引き分け。力になれていないっていう感覚はありました」

 ところが、2戦目のシリア戦。前田は再び、先発出場を告げられる。

「もう一回チャンスを与えてくれた監督の期待に応えなきゃいけない、っていう気持ちと同時に、やっぱり監督の求めることは自分が考えていることと違ってはいないんだな、っていう思いがありました」

 前田の頭にあった「監督の求めること」とは、具体的に言えば、こうだ。

「FWであっても点をとるだけじゃなくて、しっかり守備をするとか、チームを助ける動きも求められているので、それをやらなきゃいけない。

 僕が試合に出してもらっているのは、そこがあったからだと思っていましたけど、この2戦目に先発で出してもらった時、特にそれを感じました。それが監督からの信頼だったかはわかりませんが......、頭の整理がついた感じはありました」

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