前田遼一が即決で選んだ自らの代表ベストゲーム。「体力も全部使い果たした感があった」 (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by AP/AFLO

 これで振り出しに戻った試合は、その後はスコアが動かず、1-1のまま90分間を終了。延長前半97分に、途中出場の細貝萌のゴールで日本がリードすると、「正直、延長戦になったら、もう体力はいっぱいいっぱいでした」という前田は、守備固めの伊野波雅彦と交代となった。

 結果的に試合はそのままでは終わらず、日本は延長後半に2-2に追いつかれてしまうのだが、「嫌な感じはありましたけど、そこはもう仲間を信じてというか。そういう気持ちでいたのを覚えています」。

 日本はPK戦を3-0で制し、決勝へと駒を進めた。

「やりきった感というか、体力も全部使い果たした感はありました。結局(勝ち越しの)ゴールはとれなかったんですけど、味方との距離感だったり、自分で仕掛けるプレーだったり、局面、局面で周りの選手ともいい関係を築けていた試合でした。最後は代わりましたけど、代表戦のなかでは一番自分の持ち味を出せた試合だったのかな、っていう印象があります」

 結局、前田はこの大会で全6試合に先発出場し、3ゴール。チームも決勝でオーストラリアを下し、アジア王者に返り咲いた。

 当然、そこには相応の達成感があっただろうと想像するが、前田は「それもありましたけど、もっと成長しないとこの先代表にいられないっていう思いと、その両方がありました」と言い、「優勝はしたけど、勝負はこれからだな、っていう思いはすごく強かった」と、当時を振り返る。

 しかし、だからこそ、韓国戦は重要だった。自らを日本代表につなぎとめた試合。そう表現しても大袈裟ではないだろう。

「初戦もそうでしたけど、準々決勝のカタール戦にしても、いい仕事ができずに途中で代えられてしまって。それでもチームが勝ってくれたことで、また使ってもらえて、韓国戦では点をとって勝つことができた。よかったり、悪かったりを繰り返しながらも、ザッケローニ監督には我慢して使ってもらった印象はすごくあります」

 準決勝でチームを救った一発は、イタリア人指揮官の信頼に応えると同時に、自らの存在価値を示すゴールでもあった。

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