マイアミの奇跡から25年。伊東輝悦が振り返る得点シーン「ボールに触ろうかギリギリまで迷った」 (3ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Jiji Photo

---- 攻撃についての具体的なプランはありましたか?

「うーん、それもよく覚えてねぇなぁ(笑)。ゴールキーパーと最終ラインの連係に難があるっていう話をよく聞くんですけど、そんなこと言ってたかなぁ......。まあ、言っていたとしても、昔のことすぎて覚えてないんです」

---- 決勝ゴールのインパクトが強すぎたんでしょうね。

「あれはもう、ハッキリと覚えてます(笑)」

---- あのシーンを振り返ると、伊東選手は自陣で前にボールをつないでから、そのまま長い距離を走って相手ボックス内まで上がっていきました。それまでになかったプレーですが、それもプランでないとすれば、あれは本能的なものだったんですか?

「そう、まさにそれ。もともと僕は攻撃の人なので、あの場面で本能みたいなものが出てきたんでしょうね。あの局面を見て、『これはチャンスになりそうだ』っていう直感がしたので。まさかあんな感じでボールが来るとは、予想してなかったですけどね。

 ただ、あの瞬間はボールに触ろうかどうか、ギリギリまで迷ったんですよ。あれはアウダイールと(城)彰二が交錯したあとに転がってきたボールなので、もし彰二が最後に触っていれば、あいつのゴールになるわけじゃないですか? だから迷ったんですけど、でも、やっぱりあれは触っちゃいますよね。あとで彰二に触ってないと聞いて、『助かったぁ』って(笑)」

 結局、日本は後半72分に伊東が決めた1点を最後まで守り切り、グループ最強のブラジルを相手に勝ち点3をゲット。幸先のいいスタートを切った。だが、続くナイジェリア戦を落とし、最後のハンガリー戦に勝利したものの勝ち点6で3チーム(ブラジル、ナイジェリア、日本)が並び、得失点差で3位となった日本はグループ敗退を強いられてしまった。

 結果的に、天国と地獄の両方を味わうこととなったアトランタ・オリンピックは、伊東のなかでどのように消化されているのか。

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