上田綺世は超論理型ストライカー。「選択肢に0.2秒で答えを出します」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 上田はキャリアの中でゴールの定理を突き詰めてきた。シュートの修正、改善、発見と、その繰り返し。例えば鹿島では、昨シーズンからチームメイトになったブラジル人FWエヴェラウドのフィニッシュパターンも貪欲に盗んでいる。

「結局、FWはシュートの(バリエーションの)幅があるかどうか。シュートは簡単に見えるものでも、思った以上にどれも難しい」

 上田はそう言う。ゴールという答えを導き出すための定理。それに向き合って、逆算してきたからこその言葉だ。

 特徴である動き出しひとつとっても、緻密な計算と洗練が見える。味方の特性を理解し、呼吸を合わせる。一連の動きには彼なりの臨機応変な計算があって、ディテールの乱れでシュートが決まらないことはあるが、ゴールは明確にイメージされたものだ。

 さらに言えば、ゴールに至る前段階で上田にはビジョンが浮かんでいる。サイドに流れる動きやポストプレーはそのひとつだろう。スペースを創り出し、使い、共有できる。非常に理知的なプレーだ。

 また、上田はイメージを具現化する屈強な体と技術にも恵まれている。ディフェンスと並走した時にぶつかり合っても競り負けず、腰が強い。ガーナ戦で久保建英にアシストしたシーンでは、縦パスをエリア内で収めたが、特筆すべきキープ力だった。ヘディングも献身的に競り合うだけでなく、横からのボールに対してはマークを外す動きが秀逸で、完璧なインパクトで叩き込んだ。

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「僕は緊張することが嫌いじゃないんです」

 上田は訥々と語ったが、そこに彼の本質が見えた。

「例えばPKも『好き』と言いながら、本当は緊張して、(2018年の)アジア大会のマレーシア戦で蹴った時、息が詰まるくらいの緊張で呼吸も苦しくて、ボールを置くときも手が震えた。でも、この一蹴りを入れられたら、『違う上田綺世にたどり着ける』と思えて......。逆に外せば終わってしまうんですが、そこは五分五分のフェアな賭けで、僕はその一瞬が好きで、自分が蹴るまで誰も干渉できない空気も好きですね。それを楽しみたい。決められる自信もありながら、外した自分も思い浮かべられる。どっちに行けるのか」

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