「もうね、終わったと思いました」。岩清水梓が明かすなでしこW杯優勝と絶望もあったその舞台裏
岩清水梓インタビュー前編
"なでしこジャパン"の名を国内のみならず、世界に広めた2011年ドイツワールドカップ優勝――。岩清水梓(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)は、最終ラインの要として決勝まで戦い抜いた。決勝のアメリカ戦では、延長後半に相手エースのカウンターをスライディングで止め、日本を窮地から救った。しかし、それは生まれて初めての退場処分と引き換えとなった。あれから10年...。自身を成長させたドイツW杯の1カ月間を振り返る。
イングランドに敗戦後、ショックのあまりタオルを頭からかぶって顔を押さえる岩清水梓選手この記事に関連する写真を見る 当時の岩清水は、それまでキャプテンとしてだけでなく同じセンターバックとしてチームを牽引していた池田(旧姓・磯崎)浩美の引退にともない、新たに守備を率いる立場にあった。とはいえまだ24歳。大会前はまだまだ半人前だった。
「磯さん(池田)がいなくなって、何が大変ってDFラインを仕切らなくちゃいけない。世界を相手にどれだけやれるかというのはかなり意識していました。でも、近賀(ゆかり)さんや、(宮間)あや、(大野)忍ちゃんたちがいてくれたので、先輩たちには助けられていました」
それまで世界大会で好成績を残した経験がなかった日本。ダークホースと認知されたのは準々決勝で地元・ドイツを破った一戦からだ。優勝候補筆頭だったドイツとの対戦は何としても避けたいものだったが、日本はグループリーグ最終戦でイングランドに完敗したことで避けるべき相手と戦わなければならなくなった。イングランド戦後、ベンチで呆然とする岩清水の姿は印象的だった。
「その写真覚えています(笑)。もうね、終わった......と思いました。守備の人間として0-2......チームを勝たせられなかったことと、次の試合で開催国のドイツとは当たりたくないって自分もみんなも思っていたのにそうなってしまった。敗戦のショックは翌日のリカバリーまで引きずりました」
ところが、そのリカバリーで沈んでいたチームの空気が一変。キャプテンだった澤穂希、宮間、大野を中心にベテラン勢がいつも以上に声を上げて笑い、ふざけて若手たちを笑わせる。当然、カラ元気であることはそこにいる誰もが理解していた。
「あの明るさに救われたんです。あの空気に引っ張られるというか、チームとして明確に振り切れた。沈んで下を向いている場合じゃない。せっかくまだ大会は続くんだし、次に向かうしかないなって。あれで顔を上げられました。自分が同じ立場だったら、ああはできなかったかもしれない」
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