かつての人材難がウソのよう。最強のCBコンビ不在が気にならなかった

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

 かつて日本のサッカー界は、確かにセンターバック(CB)の人材不足に頭を悩ませていた。それほど大昔の話ではなく、たかだか10数年前の話である。

 多くの人の記憶に残っているわかりやすい例が、2006年ワールドカップだ。

 日本はグループリーグ初戦でオーストラリアと対戦。1-0のリードで迎えた試合終盤、のちに名古屋グランパスで活躍するFWジョシュア・ケネディをターゲットに、徹底した放り込み作戦に打って出たオーストラリアに屈し、たちまち3点を失って逆転負けを喫した。

 当時、史上最強とうたわれていた日本代表は、この初戦での負けが響き、1勝も挙げることができずにグループリーグで敗退している。

 もちろん、これは一例に過ぎない。

 年代別代表を含め、国際大会を取材していてしばしば目にしたのは、相手のロングボール一辺倒の攻撃を、わかっていても防げない日本の守備。ロングボールに競り負け、セカンドボールを拾われ、ひたすら後退を余儀なくされた。

 だが、時代は間違いなく変わっている。

 日本がセルビアに1-0で勝利した親善試合。この試合でCBを務めたふたり、すなわち、谷口彰悟と植田直通の"大津高校OBコンビ"は実に頼もしかった。

 相手がシンプルに日本ゴールへ近づこうと、何度も放り込んでくるロングボールを的確に跳ね返す。攻めている割には決定機が作れない日本の攻撃に、いくらか焦れったさがあったのは確かだが、彼らのはね返しがなければ、そもそもここまでボールを保持し続ける展開にはならなかったはずだ。

「一発目のロングボールの競り合いで相手に体を強く当てられ、自分のタイミングで飛べなかった」

 谷口はそう言って試合序盤を振り返るが、それに臆することはなく、「やりながら、飛ぶタイミングを変えたりできた」と、冷静に相手選手を見ながらプレー。「体格がいい選手に(自由に)やらせないことはある程度できたかな」と、手応えを口にした。

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