大久保嘉人が「全然、面白くなかった」南アW杯。それでも「問題もなかった」
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ワールドカップ・敗北の糧(4)
「一発を狙って、セットプレーかカウンター。まず下がって守備ブロックを作る。クリアできたら、押し上げる。敵ボールになったら、また下がり、ひたすらセットプレー、カウンターの繰り返し。全然、面白くはなかったよ」
南アフリカワールドカップでベスト16という目標を達成した後、日本代表の主力だった大久保嘉人(ヴィッセル神戸/当時。以下同様)はそう明かしている。
「でも、一発勝負と決め込んでいたから、楽しくなくても、何の問題もなかった。選手は監督の決めた戦術に合わせて動くべきで、それを徹底的に貫いた。そこまで割り切らんと、あそこまで俺はディフェンスはせん。日本人が世界で勝つためには、数的優位を作らないと難しいから、(本田)圭佑(CSKAモスクワ)も松井(大輔、グルノーブル)さんも戻った。前が戻らないと、ディフェンスはやられていた。当時は(長友)佑都(FC東京)でも、1対1の勝負に追い込まれたら厳しかった。突破されるのを承知で、戻らないわけにはいかないでしょ」
大久保の証言は、当時の日本サッカーの現状を浮き彫りにした。
2010年6月29日、プレトリア。南アフリカワールドカップ、日本はグループリーグでカメルーン、デンマークを下し、"南米の伏兵"パラグアイとの決勝トーナメント1回戦に勝ち進んでいた。大会前の悪評を覆す躍進だった。
2010年南アフリカW杯でパラグアイにPK戦の末に敗れ、うつむく日本の選手たち「(本大会前に韓国に完敗し、2軍のセルビアに負けた後の)スイス合宿で、みんなで話をした。俺はこのままでは勝てないと思っとった」
大久保は振り返って言う。
「パスをつないで攻め、守備になったら前からプレッシャーをかけ、すぐに取り戻して攻めるというのはサッカーの理想かもしれん。でも、強い相手にはパスがつながらんで、通用せん。そのままワールドカップを戦えば、結果は見えていた。『変えないほうがいい。今さら』という意見も多かったけど、俺は『変えたほうがいい』と主張した。攻撃的にやろうとしてもボールは出てこんし、中途半端に取られてカウンターを食らっていた。それなら最初から自陣に引いて、カウンターを仕掛けるほうがシンプルでやりやすかった」
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