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森保一監督へメキシコ指揮官の教え。
「前半が悪かったら手を打つべき」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 日本サッカー協会●写真 photo by JFA

 マルティーノ監督はメキシコ伝統の4-3-3を用い、アンカーに特色のある戦いで攻撃的に試合を進めようとしていた。ただし、アンカーのルイス・ロモがバックラインに入って攻守を動かす戦い方は予測できるものだった。鎌田にしてやられる形で、中盤の攻防でも勝ち切れていない。日本の帰陣の早さに後手を踏み、攻めながらも決定機を作り出せなかった。攻撃も、崩しの切り札であるイルビング・ロサーノが左サイドから侵入を狙うが、酒井宏樹に完封されていた。

 そこでマルティーノ監督は、後半になってシステムも人も変える。4-2-3-1とし、ロモを交代出場のエドソン・アルバレスとダブルボランチを組ませる。また、左FWだったロサーノを右へ。相手の持ち味を消しながら、自分たちの強みを出しにいった。

「悪かった前半で、手を打たない監督を私は理解できない。中盤の三角形を捨て、ダブルボランチにし、(メキシコ人選手の)フィジカル面の優位を使った。練習でも試したことがない布陣だったが、選手たちは所属チームでの経験を活かし、戦ってくれた」

 マルティーノ監督がそう打ち明けているように、指揮官の決断だけでなく、選手たちの適応力も大きかったか。

 メキシコはトップが中盤と連係し、数的優位を作り出すと、まず中盤の攻防で優勢を取り戻した。すると、サイドも劣勢を挽回。とりわけ右に回ったロサーノは、本職とは言えない日本の左サイドバック、中山雄太にじわじわとダメージを与えている。

 押し込まれる展開に、日本のベンチも橋本拳人、南野拓実を投入し、巻き返すための手を打った。しかし、流れはどうにもならない。濃霧の中、日本は攻守で劣勢に立たされた。

◆「メキシコ戦の敗因は得点力不足ではない」>>

 メキシコは中盤のラインを軽々と越え、サイドでは1対1で小さな勝利を積み重ねた。後半18分の先制点は、その結実だろう。敵ペナルティエリアに入って、ボールがもつれかけたところ、ラウル・ヒメネスが左から強引に持ち込み、GKを前に右足つま先で浮かす技巧的一発でネットを揺らした。ウルバーハンプトン所属のヒメネスは、昨シーズン、プレミアリーグで17得点(得点ランク8位)を記録した有数のストライカーで、決定力の差も見せつけている。

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