2020.11.19

森保一監督へメキシコ指揮官の教え。
「前半が悪かったら手を打つべき」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 日本サッカー協会●写真 photo by JFA

 2013-14シーズンにバルセロナを率いたヘラルド・マルティーノ監督は、「タタ」と呼ばれていた。しかし、現地では今でも、その愛称には揶揄のニュアンスが含まれる。気鋭のアルゼンチン人戦術家として期待されたが、チャンピオンズリーグはベスト8で姿を消し、スペイン国王杯は決勝で宿敵レアル・マドリードに敗れる屈辱を晒し、リーガ・エスパニョーラも連覇を逃した。

「リオネル・メッシのご機嫌取りもできない」

 そう茶化されるほど、低調だった。プレー内容も、フランク・ライカールト、ジョゼップ・グアルディオラ、ティト・ビラノバが作ってきたものと比べ、大きく後退した。

 マルティーノは、強烈な批判を受けることになった。その結果、たった1シーズンで自らクラブを去っている。世界有数のビッグクラブを率いる監督として、厳しい評価が下されたのだ。

 ところが、日本戦でメキシコ代表を率いたマルティーノの手腕は際立っていた。少なくとも、このレベルでは名将だ。

年内最後の試合でメキシコに0-2と敗れた日本代表の森保一監督「(2019年1月にメキシコ代表監督に就任以来)日本戦の前半は、最低の出来だった」

 マルティーノ監督は、事実を率直に認めている。

「最初の20~25分は、我々は日本に凌駕されていた。プレーにインテンシティが足りなかったし、ボールへのアプローチがことごとく遅かった。最後の15分で、ようやく互角の戦いに持ち込んだが、それでも我々が上回っていたわけではない」

 メキシコは、トップから中盤に落ちる鎌田大地を捕まえられずに苦しんでいた。そこで起点を作られ、ボールを回される。必死にプレスに行くと、裏を狙われ、ラインを突破された。

 前半14分、鎌田が遠藤航に戻したところに、メキシコ陣営はプレスをかける。すると、その裏に入った柴崎岳にパスを通され、完全にフリーにしてしまう。前を向いた柴崎に絶妙な縦パスを通され、原口元気に持ち込まれ、鈴木武蔵へラストパスが通った。この決定機を、GKギジェルモ・オチョアが防いでいなかったら、展開は違ったものになっていたかもしれない。