W杯タイトル奪還へ。なでしこジャパン
高倉監督のメンバー選考の狙い (2ページ目)
阪口のプレーは、独特の感覚によって呼び起こされるものだ。コンタクトプレーになる前の段階でピンチの芽を摘む洞察力、一瞬でゴールまでの道筋を描くことができる判断力。それらは、ピッチ上で彼女の嗅覚が働かなければ生まれることはない。阪口本人が、今年最初の代表候補合宿で復帰を果たした際に懸念していたのも"サッカー勘"だった。こればかりはピッチに立ってみなければわからない。
その阪口の不在時に鍛えられたのがボランチの面々だが、最終的には直近のヨーロッパ遠征の三浦成美(日テレ・ベレーザ)、杉田妃和(INAC神戸レオネッサ)の2人が生き残った。フランス、ドイツという厳しい相手に対し課題はもちろん出たが、対応できる場面もあり、伸びしろを買われた格好だ。不安要素は国際経験の少なさ。そこは阪口をはじめ、ベテラン勢を筆頭にチーム全体で押し上げていくしかない。
全体的に、思った以上に守備に人員を割いた印象がある。もちろんDF登録であっても、宇津木瑠美(シアトル・レイン)、宮川麻都(日テレ・ベレーザ)、鮫島彩(INAC神戸)あたりは、状況によってひとつポジションを上げる形も十分に考えられる。そこは高倉監督が一貫して求めた複数ポジションをこなすことができる選手たちだ。W杯開幕まで3週間弱。チーム力の向上が急務だ。
そのうえで欠かせないのが、コミュニケーションになる。今のなでしこたちは、年齢、経験値関係なく、意見を出しあうことを厭(いと)わないチームだ。そのチーム作りの一端を担っていた有吉佐織(日テレ・ベレーザ)の名前は最終メンバーの中になかった。高倉ジャパンとして、これからというときにケガで1年間戦線離脱。海外移籍組不在で臨んだ昨年のアジア競技大会(優勝)ではボランチへの挑戦もした。積極的に若手とコミュニケーションを取り続けたひとりだ。
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