『黄金世代』でひとり取り残されたGKの苦悩「なぜ自分だけ...」 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

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 当時のJ2は今と違って、スタジアムにはあまり観客が入っていなくて、J1とのギャップがすごかった。変なプライドもあって、『なんで自分はここにいるんだろう』と忸怩たる思いでいました。2006年にはドイツW杯もありましたが、(チームが)J2にいたので、まったく声がかからないし......。『(同世代の)みんなは海外や代表で活躍しているのに、自分は......』って、他人との比較ばかりしていましたね」

 このとき、南が自らの現状と謙虚に向き合えなかったのは、"世界大会準優勝"というプライドが邪魔したことが大きい。

「自分はもっとやれるんだ」と思ったところで、それは自己評価でしかない。しかし南には、過去の栄光、実績があるという自負があっただけに、簡単に現状を受け入れることができなかった。クラブでポジションを奪われる事態に陥っていても、危機感や不安を抱くことさえなかったという。

 そんな南が、ついに厳しい現実を突きつけられることになる。

「(当時所属の)柏を30歳でクビになったんです。そのとき初めて『プレーできるクラブがない。どうしよう......』という不安を味わいました。

 それから、意識が変わりましたね。試合に出ているから『自分はレギュラーなんだ』という感覚、そうした驕りはなくなりました。もう、常に危機感しかなかったです」

 柏から戦力外通告を受けたあと、J2のロアッソ熊本に移籍。2011年には主将となって、リーグ戦全試合出場を果たした。そして2014年、横浜FCに移籍。2017年こそ、大きなケガを負ってリーグ戦出場は1試合にとどまったが、翌2018年には復活し、25試合に出場した。

 柏を離れて以降、J2という舞台であっても、もう腐ることはなかった。高いパフォーマンスを維持して、ずっと第一線で活躍してきている。

 そうやってモチベーションを保って、ここまでプレーを続けてこられたのはなぜか。「あまり先を考えなくなったからじゃないですか」と言って、南はこう続けた。

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