W杯へ競争激化。なでしこの心臓部・ボランチに2人の新星が誕生 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 あれから5年、ボランチにコンバートされた松原は、なでしこチャレンジプロジェクトからアピールを続け、ついになでしこ初招集にこぎつけた。最初はなでしこジャパンのプレーの質と、パスや判断の早さに違いを見せつけられた。アジリティを武器とする選手が多いなか、168cmの松原の魅力はロングキックからの大きな展開力や破壊力のあるシュートというダイナミックさにある。この特長を生かしながら、まずは判断力のスピードを上げていく事で対応しようと奮闘中である。

 バランス感覚のよさから、ボールタッチが柔らかいのが杉田。だが、中盤を制するにはコンタクトプレーからは逃げられない。パワーのある相手にパワーで対抗するのではなく、コンタクトプレーになる前の段階で次の展開へつなぐ。もちろん、裏へ抜けるラストパスも出せば、自ら持ち込むこともできる。

 まったくタイプの異なる2人が初めてボランチとしてコンビを組み、立ったピッチがアメリカ戦。前日からわかりやすく緊張感をまとっていた松原と、珍しく「少し緊張しました......」という杉田。しかし、緊張などアメリカの猛攻を前に吹き飛んだ。最初の25分。ここで連続失点を食らえば、大敗する可能性も十分にあった。

 守備を得意分野としているのは松原だ。身体が大きい分、国内リーグで思い切り当たれば相手が吹っ飛んでしまう。「アメリカ相手であれば思いっきり行けますよね」とむしろフィジカル対決を楽しみにしていた。 "緊張"は「最初に一発強く行けば勢いに乗れるかな」と強気なスライディングで自ら振り切った。アメリカ選手との対峙のコツを掴み始めると、エースであるアレックス・モーガンの突破に体を入れ込んで止める場面も。「初めて(の出場)で世界1位の相手に対して、こう言ったら変ですけど、ビビることなく意外とできたっていうのが今の感覚です」と松原も充実の表情だった。

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