イラン戦は森保Jのベストマッチ。スコアとは裏腹な内容を検証した (2ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 とはいえ、イランもここまでは毎試合少しずつスタメンを入れ替えていて、日本戦も含めて全6試合に先発した選手はGKの1番(ベイランバンド)、MFの9番(エブラヒミ)、1トップの20番(アズムン)のみ。しかも全試合で交代枠3枚をフルに使いながらやり繰りしていたため、必ずしもコンディションに差があったとは言い切れないだろう。

 そんななかで始まった注目の前半は、大きく2つの時間帯に分けて見ることができる。キックオフから約20分間と、その後の約25分間だ。シンプルに言えば、前者が日本ペースの時間帯で、後者がイランのリズムで進んだ時間帯ということになる。

 では、日本が立ち上がりから主導権を握れた要因はどこにあったのか? 理由はいくつかあるが、精神面では今大会初めて格上と対戦したことで、割り切ってチャレンジャー精神で試合に入れたことが挙げられる。その結果、プレー面では前からアグレッシブにプレッシャーをかけていく積極的な守備につながった。これは、試合後の会見でこれまでとの違いとして森保一監督も言及した部分だ。

 またそれにより、日本の前からの守備に面を食らったイランは、完全に"受け"の姿勢で戦うことを強いられた。実際、その時間帯のイランの攻撃は、本来得意とするアンカーを経由したビルドアップは皆無で、1トップへのロングボール戦術に終始していた。

 しかし、だからと言って日本の攻撃が機能していたわけでもなかった。

 前半の約20分間で日本が構築したよい攻撃シーンは2度。まず13分、遠藤航(シント・トロイデン)の縦パスを大迫がダイレクトで外に流し、オーバーラップした長友佑都(ガラタサライ)がクロスを入れたシーンがひとつ(このクロスはニアに飛び込んだ南野拓実【ザルツブルク】に合わず)。

 そして19分、遠藤の縦パスを柴崎岳(ヘタフェ)が頭で外に流すと、右サイドを攻め上がっていた酒井宏樹(マルセイユ)がダイレクトでマイナスに折り返し、柴崎がスルーしたところを堂安律(フローニンゲン)がシュートを狙ったシーンだ。いずれも選手間の距離が近いなか、ダイレクトプレーを使って素早くフィニッシュに持ち込むという、いいときの森保ジャパンの特徴的な攻撃だ。

 もちろん、今大会の日本はこのようなシーンをほとんど作れていなかったので、20分間でそれを2度作れたことは進歩の証と言えるのかもしれない。しかし、この時間帯で日本が見せた縦パスは意外なほど少なく、ボランチでは柴崎が4本で、遠藤が6本。センターバックの吉田麻也(サウサンプトン)はロングフィードを含めてもわずか2本で、冨安健洋(シント・トロイデン)も1本のみ。

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