エースの座からサブへ。傷心の
中村俊輔を救った川口能活の存在 (2ページ目)
面と向かって「おまえはサブだ」と言われたわけではなかったが、最後に発した監督の言動が何を意味するのか、中村にはおおよそ理解できた。現地に入って、足首などのリハビリに専念していたが、練習を見ていると、自分の居場所がないことをほぼ確信した。
中村の目に飛び込んできたのは、これまで採用したことがない戦術だった。システムは、4-1-2-3となり、中盤のアンカーに阿部勇樹が置かれた。
日を追うごとにチームは様変わりし、オーストリアで行なわれた国際親善試合のイングランド戦(1-2)からGKは楢崎正剛から川島永嗣に代わった。そして、本番直前の最後の調整試合となったジンバブエ戦(30分×3本、0-0)では、1トップが岡崎慎司から本田圭佑に代わった。
トップ下のポジションがなくなり、アンカー阿部の前にボランチの遠藤保仁と長谷部誠が配置され、右のサイドハーフに松井大輔、左のサイドハーフに大久保嘉人が入った。
また、キャプテンが中澤佑二から長谷部に代わった。
中村はアジア最終予選を戦ったチームの痕跡が、跡形もなく消えてしまったことに唖然とした。
「キャプテンがいつの間にか、ボンバー(中澤)からハセ(長谷部)になり、システムも変わった。正直、変化のスピードについていけなかった」
大胆な改革でチームに大きな動揺があったことは、想像に難くない。レギュラーを外された中村自身、心に深い傷を負っていた。
2 / 5