静観とカミナリと。U-23選手権を勝ち進むJ1最多優勝監督の手腕 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 とりわけリズムが悪くなったのは、日本が2点をリードして迎えた後半52分。北朝鮮に1点を返されると、若い選手たちはたちまち浮き足立った。精神的な余裕を失った選手たちは、奪ったボールを意図もなく前に蹴り出すばかりで、再び簡単に相手へ渡してしまい、ただただ自陣で耐えることしかできなくなった。

 ところが、そんな苦境にも森保監督は落ち着いたものだった。むしろ、この状況を心の中では喜んでさえいたのかもしれない。指揮官が劣勢の時間帯を振り返る。

「前半で2-0になって後半押し込まれることは、サッカーではよくある展開。そのまま押し通せるのが理想だが、相手はA代表の選手もいる強敵なので、ある程度押し込まれると思っていた。練習にもなるし、追加点が取れれば自信になると思って見ていた」

 余裕を持って見ていたんですね――。そう尋ねると、森保監督は苦笑いで「余裕は全然ないけど」とつけ加え、こう語った。

「選手たちが(やるべきことに)トライし、ひたむきに苦しい局面をがんばってくれていた。理想としては何も問題なくレベルアップしていければいいが、こういう苦しいことを経験しながらレベルアップしていくというのが、個であれ、チームであれ、大切だと思って見ていたので、選手がトライすることを信じて見ていただけ」

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