ハリルよ、わかるか?「戦術は自らの優位を生かすためにある」の意味 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 4-2-3-1に近い布陣で、まずはトップのアリツ・アドゥリスがバルトラにふたをし、左MFイケル・ムニアインがビダルを封じ、右MFシャビ・プリエトがアルバを抑える。トップ下に入ったFWガイスカ・トケーロはブスケッツへのラインを遮断した。カタルーニャがボールをGKに戻した場合、アドゥリスがバルトラへのコースだけを切って、プレスをかける。すなわち、ピケにボールを持たせる、という状況を作っている。

 戦術上は奇策だった。なぜなら、ピケは世界で最も球出しに優れるCBで、彼自身もテクニックに自信を持つ。本来ならバスクとしてはピケに持ち味を出させない、とするのが正攻法だろう。

 しかし、エチャリは「最もフィードに優れるがゆえに過信もある」と考え、ピケにあえてボールを持たせ、蹴らせるように仕向けた。

 案の定、ピケは自らの力を恃(たの)み、ロングボールによって事態の打開を図った。相手の裏を狙い、逆サイドまで展開し、いくつも長いボールを蹴っている。しかし、それはエチャリの計略にはまったのだ。

 バスク人選手は、体が頑健で高さに強く、当たりに負けないという特長がある。平均身長185cmのバックラインは、170cm台の小柄なカタルーニャの選手に対し、高さではことごとく競り勝った。技術面ではカタルーニャ人選手に劣るが、高さ勝負という自分たちの土俵に相手を誘い込んで優位を得た。

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