北澤豪が語る「あの事件」へのプロセス。
代表は暗く、沈んでいた... (2ページ目)
代表を救いたい――北澤の思いはその一心だった。
「このときの岡田さんの言い方は、今考えても『選手の気持ちをわかっていないなぁ』って思うね。もしかしたら、岡田さんなりの気づかいがあったのかもしれないけど、判断を選手に委ねるってことでしょ。それって、どうなのよって思うよ。こういう対応って、俺だけなのかな? メンバーから外されたときも、同じようなことをされたからね」
北澤はやや目線を上げて、遠い昔を思い出すようにそう言った。
北澤が代表に招集されたとき、日本は危機的な状況にあった。加茂周監督がアウェーのカザフスタン戦(1-1)後に解任され、監督経験のない岡田コーチが指揮官になったばかりだった。その初陣、アウェーのウズベキスタン戦も1-1で引き分けて、日本は5試合を終えて1勝3分け1敗(勝ち点6)。この時点で、グループB3位だった。首位を走る韓国とは勝ち点7差をつけられ、グループ1位でのW杯出場切符獲得は絶望視されていた。
それでも、2位になればプレーオフがある。フランスに行けるチャンスはまだ残っていた。それだけに、ホームで行なわれる2位のUAEとの直接対決は絶対に勝たなければいけない試合だった。
だが、およそ2カ月ぶりに代表復帰を果たした北澤が見たチームは、以前のようなポジティブで明るいチームではなかった。
「暗かったね。会話もないし、(選手同士)やり合うこともない。カザフスタンとウズベキスタンの試合でいい結果を出せなくて、『国民のみなさんに申し訳ない』みたいな、そんな雰囲気で(チームは)沈んでいた。
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