日本が初出場したW杯。帰国した城彰二を襲った「あの事件」に迫る

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

私が語る「日本サッカー、あの事件の真相」第2回
W杯3連敗。成田空港「水かけ事件」~城 彰二(1)

 1998年6月29日──。

 新東京国際空港(現・成田国際空港)には、初めてW杯(フランス大会)で戦ってきた日本代表を出迎えようと、多くのサポーターやファンが集まっていた。選手たちがゲートから出てくると、大きな歓声が上がり、ファンは興奮状態となり、ロックのライブ会場のような異様な雰囲気に包まれた。

「ありがとぉ~」「よくやったぁ!」

 そんな声がロビーのあちこちで響いていた。そして、左右に分かれたファンの間を、城彰二は中西永輔のあとに続いて歩いてきた。

 すると突然、「ふざけんな」という怒号が響いた。と同時に、城の周囲がざわつき、緊迫した空気が流れた。

「最初、何が起きたのか、自分もわからなかった。何ともなしにスーツを見たら、濡れていた」

 城は、あの瞬間を思い出したかのように、複雑な表情を浮かべた――。

日本中が熱狂した1998年W杯。その当時を振り返る城彰二日本中が熱狂した1998年W杯。その当時を振り返る城彰二 1998年フランスW杯グループリーグ第3戦、ジャマイカ戦(6月26日)の前日、城は第2戦のクロアチア戦(0-1/6月20日)で痛めた右足を治療していた。負傷した右膝は水がたまるほど悪化し、岡田武史監督からは「(ジャマイカ戦の出場を)やめるか?」と聞かれたが、城は「出ます!」と即答した。

 試合当日、膝の水を抜いて、試合開始10分前に痛み止めの注射を打った。ドクターからは、「膝の痛みが大きいので、麻酔が効くのは20分程度。それ以降、(痛みでプレーが)難しくなったら、交代してもらうように」と言われた。しかし、そんなドクターの忠告は、城の耳には一切届いていなかった。

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